さて、最初の写真の左の部分は、中国の宋時代の書の四大家のひとり、黄庭堅(こうていけん)が書いている。彼は蘇軾の弟子であり、友人だった。「これは先生の最高傑作だ。二度とこうは書けないだろう」と絶賛している。のびやかな筆の運びが清々しいが、塚本さんは、黄庭堅もまた人生に前向きな人だったと見ている。
「誰が本当の悪者か」でモメる人たち
こちらの絵には、今の組織にもありそうな人間関係が描かれている。左側の欄干に手をかけた男が、右側に座っている皇帝に訴えている。皇帝の右に立つ黒い衣の人が悪者だというのだ。しかし、皇帝は聞き入れず、男は引きずり出される。
手前の真ん中でおじぎをする人は、欄干のところにいる男は忠義の士ですから、と皇帝をなだめている。
結局、黒い衣の人は悪人と判明する。皇帝は反省し、臣下の忠言は受け入れようと、壊れた欄干をそのままにして戒めとした、という故事だ。後の皇帝も、執務室にこの絵をかけていたという。
「昔も同じようなことで悩んでいたんだなと思います。左上の部分には、後の清時代の皇帝、乾隆帝が、これはいい絵だということを書き加えています。一度失敗したらしく、上から絹を張り直しています」
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