「若手はいるんです。ベテランもいます。でも……中間層がいないんです」
企業の人事担当者と話していると、ため息まじりにこう漏らされることがあります。
組織の真ん中だけが、気づけば薄くなっている。この中間層不在は、単なる人材不足ではありません。構造的な要因が積み重なった結果として、中間層が企業から離れ、別の働き方へ移動しているという現象が起きているとも言えます。
中間層は合理的に「逃げている」
中間層は、ある日突然消えたわけではなく、静かに、合理的に、「逃げていった」のです。
その理由の1つが、「責任は増えるのに、報われない」という立ち位置です。若手の育成はもとより、上司であるベテランの調整、そして現場の成果、期待といった誰よりも多くの負担のかかる見えない仕事を背負っているのに、給与はほとんど変わらない。
それどころか、「管理職なんだから、そんなの当たり前」と適切な評価もされないとなれば、「このままここにいて、私が報われる日は来るのか……」。そんな不安が、じわじわと心を侵食していくのも当然です。
そんな中、社会的な価値観が変化し、転職という別の道が開かれたのです。
ひと昔前は「転職するなんて忍耐力がない」などのマイナスイメージを持たれることもありましたが、今では「よりよいステージへの足掛かりとなる」「能力があるからこそ転職できる」といったプラスイメージも強くなり、転職のハードルは格段に下がりました。そして、スタートアップ、フリーランス、副業、リモートワークなど、働き方も多様になっています。
かつては「辞める」ことがリスクだったのに、今は「残る理由」のほうが弱くなりました。そして、中間層は、スキルも経験もある。だからこそ、最も静かに、最も合理的に、組織を離れていくのです。


















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