温暖化対策「優先すべきはEVより窓交換」の真実 新技術に期待するより確実に見込める省エネ

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まずは、家の外に面している部分(とりわけ窓)の断熱性を向上させることが先決だ(費用が相当かかる場合も多いが)。また、大気中の熱を集めて、熱交換器を経由して熱を移動させるヒートポンプ式暖房機も多くの地域で普及しつつある。

ただし、この暖房機が有効なのは気温が氷点下まで下がらない場合だけ。それより下がればほかの器具を使わなければならない。太陽熱を利用するソーラーヒーターという選択肢もあるが、これは暖房器具を最も必要とする時季や地域ではあまり役に立たない。というのも、寒冷地で寒くてどんよりとした曇天が続いたり、暴風雨が吹き荒れたり、太陽熱モジュールが分厚い雪で覆われたりすると、機能しないからだ。

いちばん安上がりなのは「家の大きさに上限を設ける」

地球温暖化のスピードを落とすための取り組みは、長いあいだ続けられてきたし、これからも続いていくだろう。そこから、なにか想像を超えるような画期的なアイデアが生まれることが、はたしてあるのだろうか?

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わたしとしては、最も費用がかからない、つまりいちばん安上がりの方策をここで提案したい。たしかに、暖房には炭素排出がついてまわる。だが、この方策を実施すれば、炭素排出量の削減に最大かつ最も長続きする貢献ができるはずだ。

その方策とは、家の大きさに上限を設けること。北アメリカではサブプライムローンによって簡単にローンが組めるようになると、マクドナルドのチェーン店のように画一的なデザインの「マック・マンション」と呼ばれるだだっ広い一戸建て住宅が大量生産された。

だから今こそ、とんでもなく床面積が広いこうした住宅の建設を禁止しようではないか。熱帯地方でも見られる同様の住宅をなくしてしまえば、むだに浪費している冷房費用も節約できる。さて、賛成の方は?

バーツラフ・シュミル マニトバ大学(カナダ)特別栄誉教授

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Vaclav Smil

エネルギー、環境変化、人口変動、食料生産、栄養、技術革新、リスクアセスメント、公共政策の分野で学際的研究に従事。カナダ王立協会(科学・芸術アカデミー)フェロー。2000年、米国科学振興協会より「科学技術の一般への普及」貢献賞を受賞。2010年、『フォーリン・ポリシー』誌により「世界の思想家トップ100」の1人に選出。2013年、カナダ勲章を受勲。2015年、そのエネルギー研究に対してOPEC研究賞が授与される。米国やEUの数多くの研究所および国際機関で顧問を務める。著書に『エネルギーの人類史』(青土社)、『エネルギーの不都合な真実』(エクスナレッジ)、『中国の環境危機』(亜紀書房)など。(写真:Andreas Laszlo Konrath)

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