享年33歳の彼女が記す「日本一長い遺書」の重み 大量吐血の後、余命2カ月でつづった覚悟のブログ

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死の淵から生還した直後から始めたブログだが、それ以前の出来事がこれだけ詳細に追えるのは、女性が吐血後も苦痛に耐えながらノートパソコン等でメモをとり続け、それを後日投稿しているためだ。つまり、吐血した時点でブログ開設を意識していた可能性がある。女性は普段からSNSに親しんでいたが、そちらにアップせずに別物として長文をストックしたところにも何かしらの意図が感じられる。

その意図の複雑さにこのブログの本質があるように思う。

ブログのタイトルは「日本一長い遺書」。命の終わりが近いことはわかっていて、それでも生き続けて長くブログを続けるようにと名付けた。宛先は1人息子だ。「長々とした手紙を息子に宛てて書きたい、と思ったのがきっかけ」だったと本人がコメント欄で明かしている。しかし、当初から明らかにそれだけではない書き方をしている。

棘のある正論の裏にある悲痛

息子以外に意識している相手は誰か? 直接やりとりした温かいメッセージをたびたび引用したり、もらった千羽鶴の写真をアップしたりしていることから、友人たちは当然対象に考えているはずだ。加えて、世の中にいる不特定多数の人々もターゲットに入るだろう。自分の境遇を知らない人たちに向けた記述も少なからず見られる。

6月末、流動食が始まり、その美味しさに涙が滲むほど幸せを感じたという。その日の日記が端的だ。

幸せのハードルを自ら高くしてしまう人は、一生不幸です。
たとえば、「両親の顔を見たことがある」というたったこれだけの幸せも、私にはありません。
両親の顔を知っているのなら、あなたは私よりも幸せです。
たとえば、「32歳の誕生日を、ガンにならずに迎える」という幸せも、私にはありません。
もしあなたが32歳の誕生日を健康に迎えたことがあるのなら、あなたは私よりも幸せです。
(略)
何が不満ですか?
夫の給料が少ないことですか?
妻の体重が増えてきたことですか?
子供の好き嫌いが多いことですか?
満たされないものをひとつひとつ数え上げるよりも、今までに自分が手にしてきた幸せを、数え上げてみませんか。
(『日本一長い遺書』ある日の日記より)
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