90歳ブロガーが書き残した孤独と自由と長寿観 「さっちゃんのお気楽ブログ」が今も続く意味

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「さっちゃんのお気楽ブログ」(右)と「さっちゃんのお気楽ブログ2」(左)。どちらも2021年1月現在まで公開している
故人が残したブログやSNSページ。生前に残された最後の投稿に遺族や知人、ファンが“墓参り”して何年も追悼する。なかには数万件のコメントが書き込まれている例もある。ただ、残された側からすると、故人のサイトは戸惑いの対象になることもある。
故人のサイトとどう向き合うのが正解なのか? 簡単には答えが出せない問題だが、先人の事例から何かをつかむことはできるだろう。具体的な事例を紹介しながら追っていく連載の第7回。
相手のお話が理解できないようでは困ります
交際範囲が広がると単なる知識だけでなくて
物事の考え方も普通では通用しなくなります
より深いものがあるようで普段の教養の積み重ねが必要になります
90歳になってもより深い教養を求める気持ちを
なくさないようにしたいと思います
(2011年11月24日「年をとってもお勉強は必要です」より)

亡くなる直前まで矍鑠(かくしゃく)とし、長寿を全うした人の胸の内には何がつまっているのだろう。

「さっちゃんのお気楽ブログ(2)」(https://plaza.rakuten.co.jp/sacchan1029/)というサイトがある。2006年に84歳でブログを始め、2015年5月に94歳と半年で亡くなるまで、ほぼ毎日自作の絵画に文章を添えた日記を更新していた「さっちゃん」こと堀江幸子さんのブログだ。

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日本人の平均寿命は2019年時点で女性87.45歳、男性81.41歳。今では90歳を超える高齢ブロガーも珍しくない。しかし、命が尽きる前日まで自力でキーボードをたたいて日々の暮らしや心境をつづり、没後も後継者が情報を補足しているケース――長い人生の最晩年の内面に高解像で触れられるケースはそうとう絞られる。さっちゃんのお気楽ブログはその希有な存在だ。

いまから100年前に生を受け、戦前戦中戦後を生き抜き、1人暮らしの孤独を受け止めて晩年の充実を手にした幸子さんのブログと向き合ってみたい。

大正デモクラシーから戦中戦後を生きた

幸子さんが生まれたのは大正デモクラシーのただ中にあった1921年。スペイン風邪の猛威がやみ、関東大震災が発生する少し前のことだ。生誕地は大阪だが、まもなくして両親は徳島に移った。兄と妹は幼い頃に亡くなっており、存命のきょうだいは23歳下の弟しかいない。だからブログでたまに語られる幼少期の思い出からは、核家族の1人っ子に近い情景が浮かび上がる。

戦前や戦中の思い出とともにスケッチを描き下ろすこともあった
次ページ人生において忘れえない強烈な出来事をつづる
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