「タクシーの仕事が最後の砦」地方運転手の本音 流転タクシー第9回、姫路のベテランが語る実情

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姫路市から外に出て生活したことがないという水田さん(仮名・50代)は工業高校を卒業後、建築や運送業など職を転々した後に、40歳でドライバーへと転職した。客足について、4、5月から比較すれと「6割くらいは戻った」というが、いまだ厳しい状況に変わりはない。

「姫路は運転手にとっては鬼門で、観光にしてもビジネスにしてもタクシーを利用するという文化がほとんどない。観光なら駅前に集中しているし、セントラルパークや太陽公園といった観光地はだいぶ離れているから、レンタカーを借りるほうが安くついちゃう。

ビジネスも大きな会社は駅前よりは郊外にあって送迎がつくケースが大半。高齢者の病院などの利用にしても、この町は家族が近くに住んでいることが多くて、基本身内での送迎、となる。

魚町(駅近くの繁華街)の飲み客も、自分の車で来て運転代行で帰っていく。姫路全般が車文化で、車がないと生活できないでしょ。高齢者も免許返納もなかなかしないし、通院もタクシーはほとんど使わず、ご近所さんで助け合ったりする地域柄やから。

多くの地方都市がそんな感じやと思うけど、この町でタクシーやるなら無線配車か、駅前での付け待ちに頼るしかない。もともと一日3万を超えるのも厳しかったが、今は2万円いけば御の字。生活は厳しい」(水田さん)

町中で流しのタクシーを拾う概念がない

兵庫県を大きく2つに分けるなら、神戸より西かどうかで生活スタイルもがらりと変わる。神戸より西に位置する市町村は、移動や生活の大半は車に頼らざるをえず、町中でタクシーを拾う概念もほとんどない。

実際、筆者が住んでいたときも、タクシーは拾うものではなく、「呼ぶもの」だと捉えていた節がある。運転代行の利用経験はあったが、タクシー利用は今回が始めてだった。

姫路市には実に30以上の運転代行業者が存在する。地方都市によくある事情だが、タクシー会社と運転代行業者の中では、トラブルも少なくないという。水田さんが続ける。

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