横浜駅西口は、関東でも有数のタクシーの付け待ちスポットとして知られている。常時30台以上が列をなし、ピーク時ともなれば優に100台以上のタクシーが入り乱れる特異な場所だ。
新型コロナウイルスの影響で、以前より利用者数は減少しているのだろう。それでも、スーツケースを引いた乗客が足早にタクシーに乗り込んでいく姿が散見され、そのたびに待ち車両が後尾から続々と乗り場へと入ってきていた。
東京で11月28日から始まった時短要請の影響もあり、横浜でも11月最終週の週末は壊滅的な状況だったという。それでも総じてみれば、利用者の推移や売り上げはそこまで悪くない、という声も聞こえてくる。12月最初の週末、横浜駅西口を拠点に3つのタクシーを乗り継ぎ、ドライバーにコロナ禍の横浜の事情を聞いた。
人口とタクシーの需給バランスがとれている
神奈川県タクシー協会に登録されている横浜地区のタクシー業者は約100社。人口密度で東京23区に次ぐ全国2位の横浜は、東京の約4万5000台に対して約7000台(神奈川県で約1万3000台)のタクシーが稼働する。
2015年度の数値だが、神奈川県では年間約1億5000人がタクシーを利用し、単純計算で県民一人あたりにつき年間11.5回タクシーを使用していることになる。東京との比較でも、人口とタクシーの需要供給のバランスがとれた地域という見方ができるだろう。
「横浜は普段使いの移動でタクシーを利用する人が多い印象です」と話すのは、横浜の老舗タクシー会社に勤務する吉岡さん(仮名・78歳)。生粋の“ハマっ子”である吉岡さんは、経営していた建築会社の倒産を期に転身した、ドライバー歴25年のベテランだ。
「横浜は広く、市内のエリアによっても全然特徴が異なるんですよ。比較的裕福な人が住む山手の住宅街なんかは、駅から距離があることも多いでしょ。それなら、タクシーに乗っちゃえ、という人も一定数いる。
横浜って、車の保持率と住民の収入、そしてタクシーの台数の3つのバランスが絶妙な場所なんですよ。だから、無線配車(客に依頼された指定場所に無線で指示を受けて向かうこと)の数がかなり多かったりします。
4~6月は非常に厳しくて、私らみたいな嘱託社員は台数を会社が減らしていたから、そもそもほぼ勤務に入れなかったんです。ただ、会社がしっかり休業補償してくれたので食べていけました。
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