タクシー業界の視点で特殊性が強い街はどこか――。筆者はそう聞かれるたびに必ず「広島市内」だと答えるようにしている。
全国でも有数の地域性が高いプロスポーツ球団があり、多くの外国人観光客や修学旅行生がこの街を訪れる。中四国地方最大の都市でありながら、大都市圏ほど地下鉄が発展していない関係でバスや路面電車、それに加えてタクシーの利用網も広い。
全国的にも純粋な流し営業が成り立つ地域は、東京や横浜に限られるという声がある一方で、広島市内は乗車回数の多さは全国でも有数だという業界の人間は少なくないのだ。
短距離での移動が圧倒的に多い
一昨年に広島市内でタクシーを利用した際に、女性ドライバーはこんなことを話していた。
「広島市内は短距離での移動が圧倒的に多いんですよ。日中だと2000円を超えるようなお客様はほとんどいません。その代わり、輸送回数がかなり多い。多い日だと(ドライバーの)1回の乗車で30近い数になるので。流し営業の先で、また次の人を拾える、ということも多い。
だから通常嫌がられる短距離の移動も、広島のドライバーからすると慣れっこなんです。バスや路面電車よりも、急ぎの際はタクシーに、という住む人の意識が大きく関係しているんでしょうね」
都内でも1乗車当たりで20を超えてくると多いとされるだけに、この数字を聞かされたときは驚いた。なぜ流し営業が多いのか。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら