霞が関官僚の何とも過酷すぎる労働現場の難題 元キャリア官僚「ブラック霞が関」著者が明かす

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例えば私が以前担当した保育問題でいうと、保護者が組織化されないこともあり、保育政策の担当者が保護者の声を聞く機会はほとんどない。いつも深夜まで仕事がある忙しさなので、保育政策の担当部署は、子育ては奥さんに任せて仕事にすべて時間を使える男性職員ばかりです。無駄な仕事をすべてやめて、少しでも現場に近いところの声を拾わないと、政策立案能力は回復できないと思います。

私が現場を回っていたのは、自分が心底理解していない立案を創るのが怖かったからです。自分の案をいちばん詳しい現場の人にぶつけてみて、まさにそんな制度が欲しかったという反応だったら、自信を持って政治家に説明できます。それを机上の知識だけで演技して説明するのとは違う。有権者と日々接している政治家に、通り一遍の説明では納得してもらえません。

キャリア官僚の2割が休職経験あり

――本来欠かせないはずのそうした時間を捻出するどころか、あまりの長時間労働に体調を崩し、休職に追い込まれる人が相次いでいます。千正さんの実感値としては、キャリア官僚の1割ぐらいは体調不良での休職経験があるそうですね。

現場を見る時間を作るどころか健康や家庭を壊すことも珍しくない状況です。自分ぐらいの世代だと、2割ぐらいは休職経験があるかもしれません。

かつては入省して数年の若手が職場に適応できず休職するといったケースが大半でしたが、今は10年以上バリバリと働いてきたエース級の人材が次々と倒れています。この仕事が得意なはずの人たちが倒れるという状況は、明らかに負荷が限界を超えていることを示しています。

以前はいくらでも働くエース級の職員でも、例えば法改正など1つの大きなプロジェクトが終わったら、ほとんど残業しない時期があったり、忙しくない部署に配置してバランスを取ったりすることができていました。ところが今は、法改正チームで徹夜続きだった職員が、プロジェクトが一段落した瞬間に、新型コロナ対応に回されるようなことが起こっています。

エースが壊れたり離職したりする組織は本当に危機的です。いちばんよく働く人の代わりになれる人はいないですから。

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