霞が関官僚の何とも過酷すぎる労働現場の難題 元キャリア官僚「ブラック霞が関」著者が明かす

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――2019年には千正さん自身も、体調不良で休職に追い込まれました。

2019年前半に「医師の働き方改革」という難しいプロジェクトのマネジメントをしていた頃に、役人人生で初めて体調を崩してしまいました。仕事が好きでタフと思われていたので、周りは驚きましたね。その後、実は自分も倒れそうだった、同僚がこれだけ倒れたといった話が次々と寄せられるようになりました。

実際、2018年頃から、厚労省ではさまざまな部署で、自分と同じようにたくさんの職員が休職に追い込まれました。若手の離職も続いています。働き方改革を担当する部署で、若手女性が3人一度に退職したことは象徴的です。ものすごく足元が揺らいでいることに気づかされました。

現場を回れる働き方改革を

――これだけ日本中で働き方改革の必要性が指摘され、その旗を振っている厚労省で、働き方改革がまるで進まないというのは皮肉ですね。

官僚の労働時間についてはPCのログイン時間などで、誰がどのぐらい残業をしているかを把握している役所もあります。ただし、この数字は公表されません。残業代が予算の範囲内でしか支払われないためです。

実際には、霞が関では大量のサービス残業が常態化していますが、政府自らが違法なサービス残業の存在を認めることはできないので、外向けには残業代の支払い可能な時間の残業しかしていないことになっています。民間企業と違って、労働基準監督署の監督官が立ち入り調査にやってきて、未払い残業代の支給を命じることもないので、チェックもされません。

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――そんな事を民間企業が行ったら、たちまち「ブラック企業」との烙印を押されます。

役所というのは、自分たちの組織、予算、業務について完全な自己決定権がないんです。この状況を変えるには、不要な作業の廃止、IT化や外注、そしていちばん負荷の大きい国会対応のあり方も変える必要があります。これらは、世論の後押しがないと実現できません。だから、多くの人に霞が関の社会的な意義と改革の必要性を伝えたかったのです。

――本書のメッセージを最も届けたいのは、どういう人ですか。

なぜこんなおかしな税金の使い方をするのだろう、なぜこうした変な政策ができるのだろうと不思議に思っている人に読んでもらいたいです。

私が心配しているのは官僚の生活というよりも、この国に絶対に必要な「政策をつくる」という機能が存続できるのかということです。国民に届くいい政策をつくるために、無駄な仕事などをなくして官僚たちの健康と家庭を守り、より現場を回れるような働き方改革が、欠かせないと思っています。

風間 直樹 東洋経済コラムニスト

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かざま・なおき / Naoki Kazama

1977年長野県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒、法学研究科修了後、2001年東洋経済新報社に入社。電機、金融担当を経て、雇用労働、社会保障問題等を取材。2014年8月から2017年1月まで朝日新聞記者(特別報道部、経済部)。復帰後は『週刊東洋経済』副編集長を経て、2019年10月から調査報道部長、2022年4月から24年7月まで『週刊東洋経済』編集長。著書に『ルポ・収容所列島 ニッポンの精神医療を問う』(2022年)、『雇用融解』(2007年)、『融解連鎖』(2010年)、電子書籍に『ユニクロ 疲弊する職場』(2013年)など。

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