霞が関官僚の何とも過酷すぎる労働現場の難題 元キャリア官僚「ブラック霞が関」著者が明かす

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本来、経営というものは顧客のニーズを捉えて勝負をかけると判断したら、そこにヒト・モノ・カネなどリソースを確保して投入しますよね。ところが霞が関では業務を遂行する体制を誰も考えない構造です。昔は、組織に余裕があったので飲み込めていましたが、限界に来ています。

政治家はニーズを捉えて進める政策を決めるのが仕事です。組織体制は、基本的に事務次官など役所の幹部が考えるのですが、幹部も現場の体制より政治からのニーズを優先せざるをえなくなっているように感じます。そのシワ寄せが現場に来ています。この構造は霞が関だけでなく地方自治体まで及んでいると思います。

低下する政策提案力

――働く側からしても、官邸サイドから突然振ってきたような案件への対応はモチベーションが上がらないでしょうね。

そうですね。もともと自分で政策を立案して社会に貢献したいと思ってこの仕事を志した人たちが多いですから。それでも国民のためになる政策だったらいいでしょうが、評判の悪いものは批判への対応もしないといけないので現場は精神的にきついです。

千正康裕(せんしょう やすひろ)/1975年生まれ。慶応義塾大学法学部卒。2001年厚生労働省入省。社会保障・労働分野で8本の法律改正に携わり、インド大使館勤務や秘書官も経験。2019年9月退官。株式会社千正組を設立し、コンサルティングを行うほか、政府会議委員も務める(撮影:梅谷秀司)

ただ、官邸や政治家が各省の官僚からの提案を聞くより、上からこれをやれと指示する背景には、官僚の政策を提案する力が落ちていることもあると思います。

政治家からするといい案を上げてこないから、官僚からのボトムアップを待つのではなく、外部の有識者から話を聞いてトップダウンで指示するようになったのだと思います。

――その理由は?

役所にいなければならない拘束時間が長くなったことの裏返しですが、官僚が会っている人間の範囲がかつてと比べてとても限定されてしまっています。官僚が普段会うのは、政治家、他省庁や自治体の役人、有識者、メディアや関係団体幹部くらいです。

本来は、お客さんである国民に近い現場の人と接して、感覚を吸収したり、政策の種を見つけたりすることが大事なのですが、その時間が本当にないんです。私自身は、平日の夜や休日のプライベートな時間に現場を訪問するのをライフワークにしていましたが、それは子どもがいないのと妻の理解があるから許されていただけで、本来は業務の中で現場を見るくらいの余裕が必要です。

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