江東区「待機児童14人」でも認可入れない裏事情 国が推進する「待機児童数」重視政策の弊害

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江東区では、指導員が認可保育園や認可外保育施設を巡回して指導したり助言したりする「巡回指導支援」のしくみは導入されていませんが、今後は質確保の対策にも目配りする必要がありそうです。

保育料は高め

認可の保育料は区が決めていて、3歳以上児は無償(江東区は給食費も無料)、3歳未満児は世帯所得によって額が異なります。

江東区の3歳未満児の最高所得階層の額は9万1500円で、これは全体に最高所得階層の額が高い東京23区でも杉並区に次いで2番目の高さです。保育園を考える親の会では中間的な所得階層(*)の保育料も調べていますが、江東区は3万3700円で、23区で最も高くなっています。

*中間的な所得階層=所得控除前の年収が夫525万9156円・妻100万1161円、夫の社会保険料額を73万6282円、子ども1人とした、第1子保育料(総務省『家計調査年報』を参考に設定)。

江東区は子育て世代の流入によって子ども関係施設の整備が追いつかない状況に危機感を持っており、マンション建設に関する条例を厳しくするなどの対策を講じています。子どもにとっての環境にも着目したバランスのいい街づくりが望まれます。

今後も待機児童対策の手は緩められませんが、保育施設が急増している現状は、保育の質にとってもリスクのある状態です。保育事業者の資質はさまざまであり、新設園の運営は何かと不安定になりがちですので、行政による十分な指導や支援が必要です。

また、待機児童数から差し引かれる数字に「特定の保育園等のみ希望している者」が大きな割合を占めていることは十分に精査し、子どもや保護者のニーズに合った整備にすることも課題であると思います。

普光院 亜紀 「保育園を考える親の会」アドバイザー

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ふこういん あき / Aki Fukoin

早稲田大学第一文学部卒。保育園に子どもを預けて働く親のネットワーク「保育園を考える親の会」代表。保育ジャーナリスト。大学講師。著書「後悔しない保育園・こども園の選び方」(ひとなる書房)ほか多数。

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