このような保育環境の悪化は、人口急増に対応するための急激な待機児童対策によって起こっています。中央区の航空写真を見ると、びっしりと建物が並んでいて余白がありません。しかし、高層マンションの周囲には建築基準法等の関係で「公開空地」というオープンスペースが設けられている場合が多く、制度を工夫すれば土地の捻出はできるのではないかとも思われます。これは、個々の保育施設の力ではどうしようもなく、国や自治体が土地利用政策に子どもの視点を入れて工夫をすることが求められます。
ところで、中央区の保育室の1人当たり面積の基準を見ると、公立保育園では国が求める基準よりも広い基準を中央区が独自に設定しています。公立保育園は新設されていないので、かつての基準がそのまま生きているのですが、かつては子どものために十分なスペースを確保しようという考えがあったことがうかがわれます。
保育士配置基準も、公立は1歳児を子ども5人に保育士1人とするなど、国基準を上回っています(国基準は子ども6人に保育士1人)。ただし、東京都内は同様の保育士の上乗せをしている自治体が多いので、都内標準であると言えます。
保育の質を確保するために、区の指導員が認可保育園や認可外保育施設を巡回して指導したり助言したりする「巡回指導支援」という制度があります。この指導員数や巡回頻度も自治体によってさまざまです。
中央区では、7人の指導員が年に10回程度、各施設を巡回しています。これは頻度としては多いほうです。急激に保育施設を増やしているので、質にも目配りをしていることがうかがわれます。
保育料は比較的安い
財政が安定している中央区ですが、その恩恵は保育料で受けることができるようです。認可の保育料は自治体が独自に決めており、3歳以上児は無償(別途、副食費の負担あり)、3歳未満児は世帯所得によって額が異なります。3歳未満児の最高所得階層の保育料は64000円で、これは東京23区では安いほうです。保育園を考える親の会では中間的な所得階層*の保育料も調べていますが、中央区は16300円で、100市区では渋谷区、立川市に次いで3番目に安い額になっています。
*中間的な所得階層=所得控除前の年収が夫5259156円・妻1001161円、夫の社会保険料額を736282円、子ども1人とした、第1子保育料(総務省「家計調査年報」を参考に設定)。
子育て世代がどんどん流入しているにもかかわらず、保育園をつくる土地が空いていないのは、とても心配です。ビルの中につくらざるをえない場合でも、周辺の公園や公開空地などを子どもの遊び場として活用しやすいように整備するなど、なんとか子どもの外遊びの環境を考えてほしいところです。
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