(第25回)学問は社会に出てから役立つのか

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(第25回)学問は社会に出てから役立つのか

福井信英

 何のために学ぶのか。
 今回はこの問いに対して考えてみたい。
 学生時代に何を学ぶか、人によって選ぶテーマはさまざまだ。将来のキャリアを考えて必要な学問をしっかりと積み上げる人もいれば、興味・関心の赴くままに学ぶ人もいるだろう。何のために学ぶのか、それをしっかり考えることで、学びはより実りのあるものとなる。

●将来をすべて見通して学ぶことは難しい

 Apple社のCEO、スティーブ・ジョブズは「学ぶこと」の難しさとすばらしさを次のように表現している。

 先を見通して点をつなぐことはできない。後から振り返ってつなぐことしかできない。だから将来何らかの形で点と点がつながると信じなければならない。

 これは、スタンフォード大学の卒業式での有名なスピーチの一節だ。ジョブズは大学の講義に興味が持てず、入って半年後には中退した。その後は、自分自身の興味・関心を満たすためだけに学ぶことを決め、カリグラフィ(文字装飾)の講義にモグリで参加することにした。それが将来役に立つとは思ってもいなかったようだが、マッキントッシュを設計しているときに講義で学んだことが急に脳裏によみがえってきたという。これらを設計に盛り込み、マッキントッシュは美しい印刷技術を持った世界で初めてののコンピューターとなり、爆発的に売れた。

 「将来をすべて見通して学ぶことは難しい。しかし学んだことや経験したことの意味がつながる瞬間が将来訪れる。それを信じなければならない」とジョブズはいう。

 このエピソードの意味するところは2つある。
 1つは、何のために自分が学んでいるのか、つねに問いたださなければならないこと。もう1つは、学んだことは将来必ず意味を持ってくると信じることだ。

●学ぶことで得られる4つの効用

 何のために学ぶのか。この問いに答えるためには、学ぶことによって得られる効用をしっかりと認識することが大切だ。私が考える効用とは、大きく分類すると以下の4つだ。
1.学ぶことそのものによって得られる喜び
2.将来役立つ知識・技術を得る
3.学んだことを示すシグナルを得る
4.学ぶ過程で得られる思考力・行動力・交友関係
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