福井信英
前回のコラムに引き続き、今後就職活動のルールはどう変わるのか、どう変えるべきかについて考えてみたい。
就職活動が学業に及ぼす負の影響でいちばん問題視されているのは、学校の授業を休み、会社説明会やインターンシップに参加する学生が出てくることだろう。
親しい大学教授から、次のような話を聞いた。
本来研究に時間を割き研究を完成させねばいけない時期なのに、就職活動に時間をとられてしまうのは、大きな問題だ。しっかりとした研究を残せば企業から引く手あまたであるにもかかわらず、研究が中途半端な状態で就職活動をしてしまうから、研究も就職活動も中途半端に終わってしまう。
これは非常にもっともな意見だ。彼は企業との共同研究も数多く行っており、業績も残している。特定分野で最先端の知識と経験を積めば、その技術や研究を欲している企業には大変就職しやすいに違いない。
こういった意見が学業に時間を割くべき、という論者の主張の拠り所ともなっているし、私もこの意見には賛成だ。
しかし、一方でこの意見には、解決しなければならない問題が2つある。
1つ目は、大学でのゼミなり、研究なりが、学生自身の能力を高める質の高いものである必要がある、ということだ。ゼミであれ研究であれ、真剣に取り組めば企業で必要とされる自律性や問題解決能力、コミュニケーション能力は十分磨かれる。前述の大学教授の研究室は十分この要件を満たしていると思われるが、中にはこの要件を満たしていないゼミや研究室もあるのではないだろうか。
2つ目の問題は、進学後、その分野に興味を持てなくなった学生の受け皿はどうなるのか、というものだ。
たとえば、志望校選択当時は自動車に興味があり工学部に入ったが、大学生活を続け、経済・社会に興味を持つようになり、金融機関に就職したくなったとする。このような学生の興味・関心を機械工学の研究という環境に抑えつけておくことは難しい。 こういったことが起こらないようにするためには、できれば高校生のうちに、遅くともゼミや研究室といった進路が固まりきらない大学1~2年生に対して、短期・長期の休暇を利用して、自分の興味・関心がある分野をのぞかせるのが望ましい。 その視点からいうと、現在行われている、インターンシップや企業が主催するセミナーは、本来大学1~2年生向けに対して行われるべきものだといえよう。
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