ジョブズの軌跡から読み取れる「光と影」の断面

意外にもアップル本社は四角四面な場所だった

「Find what you like best of all」1988年10月12日(撮影 小平 尚典)
いまもなお語り継がれる伝説の経営者であるスティーブ・ジョブズの知られざる姿を、若き頃から彼を撮り続けてきた写真家の小平尚典と、あの300万部を超えるベストセラー『世界の中心で、愛をさけぶ』を著した片山恭一がタッグを組んで描く連載。第5回をお届けします(毎週月曜配信予定)。

5 カリフォルニア・ドリーミング

1960年代のはじめごろ、カリフォルニア南部ではサーフィンが大流行していた。サーファーたちの多くはバンドをやっていて、それなりに地元のファンをつかんでいたらしい。ウィルソン家の長男ブライアンはサーフィンをやったことがなかったが、弟のデニスはいっぱしのサーファーだった。

デニスはブライアンに「おれたちもサーフィンの曲をやろうぜ」ともちかける。ブライアンはいとこのマイク・ラブと2人で「サーフィン」「サーファー・ガール」「サーフィン・サファリ」といった曲を書き上げ、弟たちを含むバンドで練習をはじめる。場所はウィルソン家のガレージだった。

広く流布されている「ガレージで起業」という伝説

スティーブ・ウォズニアックは否定しているけれど、ジョブズの伝記(ウォルター・アイザックソン『スティーブ・ジョブズ』など)ではロス・アルトスにある実家のガレージで「アップルⅠ」を組み立てる作業が行われたことになっている。ジョシュア・マイケル・スターン監督の映画『スティーブ・ジョブズ』でも、養父が日曜大工に使っていた狭いガレージに仲間を集めて作業をするシーンが描かれていた。

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真相はどうであれ、「ガレージで起業」という伝説が広く流布されているのは、彼らのなかに共通して流れていたアマチュアリズムを象徴しているからだろう。ウォズニアック自身がもともとアマチュア無線愛好家だったし、コンピュータを使ってプログラムを書くことに興味を見出してからも、ヒューレット・パッカード(HP)に勤めながら趣味や楽しみのために自分のベッドルームでデザインや図面書き、ハンダ付けやチップの取り付けなどの作業を行っていたらしい。

ジョブズとウォズニアックが出会ったホームブリュー・コンピュータ・クラブにしても、ビジネスを目的とするものではなくコンピュータ・マニアがノウハウを交換したり技術を披露したりする場だった。

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