スティーブ・ジョブズ、今だからこそ語る伝説

「あの日のジョブズは」彼の知られざる姿を描く

初代のNeXT製コンピュータは1990年、一般市場で9999ドルで発売された。1988年10月12日サンフランシスコの発表会にて、なんとなく最初は緊張していたような33歳のジョブス(撮影:小平 尚典)
アップル創業者のスティーブ・ジョブズ。2011年10月5日の逝去からこれまでを振り返れば、アップルが世に送り出した「iPhone」を軸に世の中はスマホによって、まさに激変した。いまもなお語り継がれる伝説の経営者であるジョブズの知られざる姿を、若き頃から彼を撮り続けてきた写真家の小平尚典と、あの300万部を超えるベストセラー『世界の中心で、愛をさけぶ』を著した片山恭一がタッグを組んで描く新連載をスタート。全12回でお届けします(毎週月曜配信予定)。

1 ジョブズの写真

父親はシリアからの留学生だった。母親はドイツ系移民の厳格な家庭に育った。ウィスコンシン大学の大学院生だった2人の間に生まれた子どもは、最初から養子に出されることが決まっていた。

新連載スタートです

養父のポール・ジョブズは高校中退後、機械工として働きながら中西部を転々としたのち沿岸警備隊に入隊、第2次世界大戦中は機械工にして機関兵だった。戦争が終わり沿岸警備隊を除隊したポールは、アルメニア移民の娘、クララ・ハゴビアンと結婚する。子どもに恵まれなかった2人は、1955年2月24日に生まれた男の子を養子にする。こうしてスティーブ・ジョブズという1人の人間が、この世界の片隅に小さな場所を占めるようになる。

イエスの父、ナザレのヨセフは大工だった。キリスト教神学ではイエスは聖母マリアの処女懐胎によって生まれたことになっている。するとマリアの婚約者にして夫であるヨセフは、イエスにとっては養父ということになる。「処女懐胎」というのは、どう受け取ればいいだろう? キリスト教徒でないぼくは、苦し紛れに「養母」と解釈してみる。イエスもジョブズと同じようにもらい子だった。養父と養母によって育てられた彼らは、ともに内に激しいものを宿した。

ジョブズはコンピューターで世界を変えようとした

ナザレのイエスは言葉と行動によって世界を変えようとした。一方のジョブズはコンピューターによって世界を変えようとした。現に2人とも、その後の世界を大きく変えた。イエスの宗派は人種や民族を超えて世界中に広がった。ジョブズの生み出した製品は、社会的にも経済的にも文化的にも異なる何十億もの人々の日常生活を文字どおり一変させた。

歴史上の人物としてのイエスの生涯は、洗礼者ヨハネに会うところから始まる。新約聖書によると洗礼を受けたイエスは荒野に赴き、そこに40日とどまってサタンから誘惑を受ける。ジョブズも若いころインドに出かけている。有名な導師に会うためだったという。自分のなかに過剰なものを抱えた若者を連想させる。

いま手元に50枚ほどの写真がある。友人の写真家が送ってくれたもので、撮影された時期は1990年前後。当時のジョブズはアップルを追放され、新しく立ち上げたネクストで苦戦していた。自らが創業した会社は、いまや敵とは言わないまでも追い越すべきライバルになっていた。彼は新しい会社をアピールしようとPR活動に精を出し、インタビューなども積極的に受けていたようだ。

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