若きジョブズが描いた「世界を変える」という夢 1人1台「私のコンピューター」を行き渡らせる

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「オブジェクト指向プログラミングは、 1990 年代の革命だ」スティーブ・ジョブス。Nextのオフィスにて。1990年9月(撮影:小平 尚典)
いまもなお語り継がれる伝説の経営者であるスティーブ・ジョブズの知られざる姿を、若き頃から彼を撮り続けてきた写真家の小平尚典と、あの300万部を超えるベストセラー『世界の中心で、愛をさけぶ』を著した片山恭一がタッグを組んで描く連載。第4回をお届けします(毎週月曜配信予定)。

4 世界を変える

アップルが世界的なパーソナル・コンピューター企業になったころ、ジョブズは「コンピューターが1人1台の世界になれば何かが変わるはず、10人に1台の世界とはまったく違ったものになるはず、そう思ったから会社を作ったんだ」と言っていたらしい。「コンピューターの使い方を学ばなければならないという障壁を取り除きたいと思っている」とも語っている。実際に、アップルはそうした製品を次々と生み出していくことになる。

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コンピューターというパワフルなテクノロジーを多くの人が使えるようになったときに何かが起きる。何が起きるのかわからない。何かが変わるのは間違いない。世界が、人間そのものが。なぜなら一人ひとりが自分のコンピューターを持つようになれば、人々の行動様式が変わるからだ。おそらく思考様式も変わるだろう。つまり未来が変わるのだ。

ジョブズはテクノロジーで世界を変えようとした

ジョブズには革命家としての一面がある。ただ彼の中に、どういう世界にしたいかという明確なビジョンはなかったように思う。ただ世界を変えるようなことがしたい。後のことまでは責任をもたない。ジョブズらしいけれど無責任でもある。

もう1つ、彼はイエスやレーニンとは違い、言葉や暴力ではなくテクノロジーによって世界を変えようとした。より正確にいえば、テクノロジーと人間の関係を変えることで世界を変えたいと思った。また変わるはずだと信じていた。

同じことを言ったのは彼が最初ではないかもしれないが、ジョブズほど強い説得力をもって人々に訴えた者はいない。彼にはかたくなな信念と熱意があった。その試みは最後には文字どおり命がけのものになった。その本気度が多くの人に伝わったのかもしれない。

ジョブズがこだわったのは「自分のコンピューター」ということだった。これは単に「1人1台」ということではない。使う人が自分を表現し、新しい可能性を引き出せるマシンでもある。そのために彼はシンプルさを求めた。

普通の人が思いのままに使えるソフトウェアとハードウェアを提供する。しかもそこに人間味が感じられなければならない。美しさや感動といった人間的魅力を備えていなければならない。ジョブズが設定するハードルはつねに高い。

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