加えて、今、初診からのオンライン診療が可能になっています。コロナウイルスへの感染を恐れ、病院で受診するのを我慢したりすることがないように、電話やオンラインで治療を受けることができます。医療従事者の感染リスクを低下させることも期待されます。しかし、初診からのオンライン診療は、コロナ禍における時限的な特例措置として規制緩和が行われたにすぎません。私はこれを恒久化していくべきだと考えています。
人生100年時代の医療・社会保障とは
山本:医療・社会保障分野でのデータ活用によって健康管理を効率化する、という考え方は「人生100年時代」に向けた提言とも通じると思いますが、うえのさんは人生100年時代に、医療・社会保障分野はどのように変わっていくべきとお考えでしょうか。
うえの:「人生100年時代」が現実になる中で、その100年間を健康に過ごせることが重要だと思っています。100歳まで長生きしても、ベッドで寝たきりになっている時間が延びただけというのでは意味がありません。
「人生を100歳まで健康で過ごす」ために「病気との付き合い方」が重要です。病気や障害があっても、病と共生し、健やかに生活できるように、社会保障を今日的な状況に合わせて、充実させていくことが重要です。
そして、そうした病気との「共生」だけでなく、「予防」も重要です。これまでは、病気になってから病院でどのような治療を受けるかを考えてきましたが、その前に、病気にならないための努力や工夫をしていく必要があります。こんな風に申し上げれば、「予防が大切だ」と共感いただける方は多いと思うのですが、実はこれを政策として推し進めるのは簡単ではありません。国の審議会では「予防をすれば、かえって医療費を増やすのでないか」という議論があり、なかなか理解を得られません。
しかし、私は「予防は医療費を増やす」とか、逆に「減らす」といった、過度な一般化にはあまり意味がないと思っています。そうではなく、「何の」病気を「どのように」予防すれば意味があるのかを知ることこそが重要なのです。このためには、きちんとデータを取って、科学的根拠を積み上げていかなければなりません。
現在、政府は、認知症や糖尿病の予防の効果を明らかにする大規模な実証事業を進めています。私が会長を務める議員連盟でも「何の予防に健康を増進させる効果があり、医療費を削減する効果があるのか」を明らかにするエビデンスを創出するための実証事業を提案しています。地味なようですが、実はこれこそが社会に「予防」を定着させていくうえでの大きな第一歩となりえます。皆さんも、効果がある予防が何かわかれば、それを積極的に取り入れたいと思うのではないでしょうか。「予防」をキーワードに、社会全体に大きなムーブメントを起こしていきたい。
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