近藤:私自身、医師として救急医療もやっていた時期に「もうちょっと早く見つかっていれば」という脳卒中の患者さんにたくさん出会ってきました。新しい住宅でのテクノロジーを使って、そのような患者さんが1人でも救われる世界が来ることを願います。住宅については、断熱技術の向上も目覚ましいですね。伝統的な日本の家は「夏をもって旨とすべし」と言われ、冬は寒い。寒いことで子どもが風邪をひきやすいという医学データもあり、住宅という面では課題もあると感じています。
うえの:ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)という年間の一次消費エネルギー量(空調・給湯・照明・換気)の収支をプラスマイナス「ゼロ」にする住宅の普及がこれから本格化しますが、同時に断熱性能を上げて日本の住宅を「冬は暖かく、夏は涼しく」していくことも大事だと考えます。平均的に血圧が下がったり、健康診断を受けた際に、異常が発見されたりする割合が低下するというエビデンスも示されているからです。
つい歩きたくなるような街づくりは健康につながる
近藤:海外では地域の歩きやすさをウォーカビリティと言うようですが、つい歩きたくなるような「歩きやすい街」、「外出したくなるような街づくり」をすることで、運動、身体活動量も増え、人との交流も増えると期待されます。そんなことが国土交通省で実際に事業として始まっていると聞きました。「自転車で移動しやすい街づくり」も進められているようですね。これは環境や健康の観点からも、そしていろいろな関連する産業という面で、「三方おし」のやり方だと個人的に注目しています。
うえの:国土交通省の歩きたくなる街づくり都市計画では、中心市街地については車中心ではなく、人中心の生活ができる街づくりを施行していく動きが強まっています。歩くということは、まさに健康と直結をするので、そうしたウォーカブルな街づくりの中に、さらに健康という要素を大きく盛り込んでもらえるような働きかけを国土交通省でもしています。
いくつかの先進的な事例があり、新潟県のある市においては、「歩こう条例」というのを作って「歩きましょう」と市民に呼びかけをしています。その中でポイント制度を導入して、たくさん歩くことでポイントがもらえ、何かに交換できるという取り組みを行っている市があります。実証的な効果を検証されていますが、介護の認定率が、新潟県の中では最も低く、それが抑えられる傾向があることが明らかになっているデータが示されています。
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