M:朝食(ミール)のおいしさが決め手
そして最後がミール(食事)のM。ビジネスホテルといえば泊まり+朝食だが、朝ご飯のクオリティが非常に高いホテルが、女性客の人気を集めている。
写真のホテルピエナ神戸もブッフェ形式でスイーツの品ぞろえも豊富にあり、何時間も時間を忘れて食べふけってしまう。スイーツの後は、〆のお茶漬けが人気という、信じられない状況だ。
北海道でホテルを展開するパコグループも、地元でとれる食材をふんだんに使った朝食ブッフェが好評価を得ている。ホテルパコ函館では、地元で水揚げされるイカを旬なら生食、それ以外の時期には塩辛やフライにして提供。以前は温泉だけ利用する日帰り客も多かったが、朝食を強化してから泊まりで朝食を楽しむ宿泊客が急増。年間20泊以上すると加入資格が持てるゴールド会員が2万人から7万人に増えた。
通常のホテルのレストランは、外食同様に食材原価を2割以下に抑えることで採算をとっている。ところが、朝食に力を入れるホテルは4~5割の原価をかけている。だから、素泊まりに朝食をつけた場合、1000円程度高くなるが、味に対する客の満足感はその価格より高いものになる。
なぜここまで原価をかけるのか。理由は、宿泊の稼働率が上がればホテルは儲かるからだ。
レストランなどの料飲部門の粗利は2~3割程度。だが、宿泊部門のそれは7割にも達する。単価も1000円を超えれば高額と感じる朝食に比べて、宿泊は安くても1部屋5000円台から、時期によっては1万円近くまで上昇する。極端に言えば、料飲が少々の赤字であっても、稼働率が100%近くなら十分以上に採算が合うのだ。
バブル崩壊後は法人宴会が減り、少子化やハウスウエディングの隆盛で婚礼客も奪われたシティホテルは、直営レストランの代わりにファミレスなどのテナントを入れ、宴会部門も縮小してデフレに耐えてきた。その間隙を縫って、低廉な価格で泊まれるビジネスホテルのチェーンが勢力を拡大してきた。
ただ、安かろう悪かろうの価格競争では、いずれ消耗戦で縮小均衡に陥りかねない。そこで各ホテルは知恵を絞り、プチぜいたく価格でも満足度の高い「宿泊特化型ホテル」に進化することで生き残りを図ろうとしている。
(撮影:今井康一)
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