「城下町」がこんなにも奥深いと知っていますか 蘊蓄100章で綴る長い歴史と広がり

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81. 秋田県「にかほ市」はTDKの創業者・齋藤憲三の出身地で旧・仁賀保町周辺にはTDKの工場や関連会社が集中

82. 2006年に都市対抗野球で優勝したTDK硬式野球部もにかほ市にあり、東北勢悲願の初優勝であった

83. 千葉県「野田市」はキッコーマン(旧・野田醤油)の発祥地で現在も本社をはじめ日本拠点の約半数が集まる

84. 古くから江戸川や利根運河の水運で栄えた醤油名産地だったが1917年に茂木・高梨一族が野田醤油を設立

85. 総合病院のほか、かつては銀行、水道、鉄道等も運営し、市に代わって公共図書館も運営した

86. 生家が大阪の醤油屋であったジャーナリスト大宅壮一は野田市のことを〈醤油藩の城下町〉と表現している

財政指数で毎年上位に入る隠れた企業城下町

87. 忍野八海の名水で知られる山梨県の「忍野村」は、隠れた企業城下町で財政力指数でも毎年上位に入る

88. 工作機械用NC装置や産業用ロボットの世界No.1メーカーであるファナックを1972年に誘致

89. ファナックは約6000億円の売り上げを誇る優良企業で、その税収と自衛隊富士演習場の助成金で忍野村は潤う

90. 日本海側の企業城下町として名高い「小松市」は建設機械メーカー・コマツ(旧・小松製作所)の本拠地

91. 社名の〈コマツ〉は創業地である小松市に由来しており、本社が東京移転の後も市内で雇用が発生している

92. 大阪府「池田町」はダイハツ工業の企業城下町本社の所在地は「池田市ダイハツ町1-1」である

93. もともとは池田市神田(こうだ)町であったが、1966年本社および第二工場の地区のみダイハツ町に改名された

94. 池田市は3人目の子どもが産まれた場合、ダイハツから3年間無償で車が貸与される子育て支援を行っている

95. 山口県「山陽小野田市」は明治維新後、セメントを中心とした化学、製油の工業都市として発展

96. 太平洋(旧小野田)セメントや日産化学工業の本拠地で市内にはいまも「セメント町」「硫酸町」の町名が残る

宮城県延岡市(写真:at/PIXTA)

97. 1587年、秀吉の九州征伐により高橋元種が入封し縣(あがた)城(延岡城)を築城した宮崎県「延岡市」

98. 以降、近世城下町としての町割が整うが、明治期に県庁が宮崎市に置かれたことで最も遠い旧城下町となる

99. その危機感から旧延岡藩主・内藤政挙は旧領の復興のため銅山や電源開発に注力し、延岡市の近代化を推進

100. 1923年には日本窒素肥料の工場が建設され、それを元に戦後は旭化成の企業城下町として発展を遂げた

(文:寺田 薫/モノ・マガジン2020年1月2日、16日合併号より転載)

参考文献・HP/「城と城下町100選」(平凡社)「国別藩と城下町の事典」(東京堂出版)「一度は歩きたい! 日本の町並み」(洋泉社)「現代の世相2」(小学館)「進化する企業城下町」(古今書院)、城びと、日経電子版、公務員総研ほか関連HP
モノ・マガジン編集部

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