「城下町」がこんなにも奥深いと知っていますか 蘊蓄100章で綴る長い歴史と広がり

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61. 特定企業の本社や工場、関連会社や下請け会社などが一自治体に集結し、住民らの労働機会にもなっている

62. その独特の階層化を生んだ都市形態を城下町の階級や組織に擬えた言葉で経済学や地理学でも用いられる

63. 企業城下町には、江戸や明治期の創業地の流れをくむもの、昭和の高度経済成長期に生まれたものもある

64. 高度経済成長期の日本では自動車産業や鉄鋼・造船・化学等の重化学工業が大きく発展した

65. しかしすでに過密化した都市部では大規模用地の確保が難しく、公害問題等さまざまな規制もあった

66. そこで地方自治体は企業による莫大な固定資産税の確保をにらみ、企業や工場の誘致活動を積極的に行った

67. 用地確保に悩む企業と自治体の思惑がマッチし、全国に企業城下町と呼ばれる地方工業都市が多く誕生した

唯一、市名に創業者一族の姓が付けられた「豊田市」

68. だが1企業の盛衰が自治体の盛衰に直結してしまうという社会問題や経済問題も生み出すことになる

69. それが研究対象となり経済学者・宮本憲一が論文等で使用したのが企業城下町という言葉の始まりとされる

70. 1企業の影響力は雇用や経済のみならず政治にまで及び、企業関係者が議員や首長を勤めるケースもある

71. 1970年代には炭鉱都市、1980年代には造船・鉄鋼業が斜陽産業となり、1990年代にはグローバル資本主義が台頭

72. 安価な人件費やコストの削減を求めて工場等を海外移転する企業が増え、空洞化が進む企業城下町も多い

73. 日本の企業城下町で唯一〈市名〉に創業者一族の姓が付けられているのが愛知県の「豊田(とよだ)市」だ

74. 世界でもトップクラスの自動車メーカーであるトヨタ自動車のお膝元で、本社は「豊田市トヨタ町1番地」

75. トヨタグループ創始者・豊田佐吉の長男である喜一郎が、1937年にこの地でトヨタ自動車を創業した

76. 当時は〈挙母(ころも)市〉という地名だったが、トヨタ自動車の成功によって全国有数の車の町に発展

夕張市もかつて炭鉱町として栄えた企業城下町だった(写真:Kazuaki Omi/PIXTA)

77. 1959年に〈豊田市〉と改名し、現在も日本で上位の財政力指数を誇る市町村となっている

78. 一方、北海道の財政難都市として知られる「夕張市」もかつては炭鉱町として栄えた企業城下町であった

79. しかし1990年に三菱南大夕張炭鉱が閉山して企業が撤退夕張市は主力産業を失ってしまう

80. 企業が担っていた住宅の維持管理費や上・下水道の整備等を市が負担することになり赤字を抱え続けた

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