「ひたちなか海浜」赤字路線脱し驚きの延伸へ 派手な話題では再生できない「復活への軌跡」
全国的に地方鉄道が経営難にあえぐ中、前代未聞とも言える“延伸”に踏み切ろうとしているローカル鉄道がある。茨城県ひたちなか市を走る第三セクター路線、ひたちなか海浜鉄道湊線だ。
湊線は、もともと地元企業である茨城交通によって運営されていた純民間の鉄道路線だったが、経営状況の悪化に伴い2008年からひたちなか市が出資する第三セクターに移管したという経緯を持つ。それから8年、東日本大震災による運休や利用者の落ち込みはあったものの、年々営業成績を向上させて黒字化が視野に入るまで立て直しが図られてきた。そして、ここに来てローカル鉄道としては異例とも言える延伸計画が持ち上がっているという。
この湊線の“復活”は、経営難に苦しむ全国の地方鉄道にとって再生のモデルケースとされることも少なくない。湊線に倣って経営再建に取り組めば、“どん底からの再生”も夢ではない――。湊線が地方鉄道の関係者に希望を与えていることは間違いないだろう。
地域の潜在力を活かした「復活」
しかし、湊線を取り巻く状況を見ると、単純に再生のモデルケースと言えるほど事態は単純ではない。そもそも、他の地方鉄道と比べれば、湊線の沿線環境はひたちなか海浜鉄道発足の時点で、かなり恵まれていたのだ。
発足以来同社の社長を務める吉田千秋氏は、「茨城交通から経営を引き継いだタイミングがかなり良かった」と話す。
「茨城交通さんが湊線を手放したのは、湊線そのものの運営が行き詰まったからではなくて、茨城交通本体の経営難によるもの。もちろん大きな赤字を出していたことは事実ですが、本当にどん底というわけではありませんでした。言い換えればまだ傷は浅い段階で、地道に手を打っていけばなんとかなる。そういうタイミングで第三セクターとして引き継ぐことができたのです」
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