マリリン・モンローの肖像画、キャンベルスープの缶の絵など、誰でも1度はアンディ・ウォーホルの作品を目にしたことがあるだろう。アメリカが生んだ、20世紀を代表するアーティストのひとりと言われるけれど、いったいどこがすごいのか? 六本木ヒルズの森美術館で開催中の「アンディ・ウォーホル展:永遠の15分」を企画したキュレーターの近藤健一さんに話を聞いた。
アンディ・ウォーホルは1960年代前半に表舞台に躍り出た。それは2つの点で革新的だったからだと近藤さんは語る。
絵画のヒエラルキーを“もてあそぶ”
「当時の絵画は、その人のオリジナリティのある主題で、精神性やメッセージが込められた表現がよいとされていました。ところがウォーホルは、マリリン・モンローやキャンベルスープのように、大衆的で低俗と見なされていたものを主題にして、美術作品として発表したのです」
その制作方法も今までにないものだった。絵画というのは、布のカンヴァスに画家がコツコツと描く一点もの。だから美術では絵画がいちばん格上で、紙に何点でも複製できる版画は二流と見なされていた。「ウォーホルはこのヒエラルキーをもてあそんでいます」。
つまり、シルクスクリーンという版画の技法でカンヴァスに刷り、「これは絵画です」と提示してみせたのだ。「絵画は崇高で高尚で、天才にしか作れないと信じている人にとっては、絵画を冒瀆する行為でした。美術のおきて破りです」。
当然、非難の声が上がったが、その一方で、絵画の既成概念を揺さぶる前衛性が評価された。1970年から71年にニューヨークのホイットニー美術館をはじめ、欧米の美術館で個展が開かれると、彼の評価は決定的なものになる。
物議をかもした、マリリン・モンロー
ここからは展示作品を見ていこう。
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