黒光りのする鎧兜に身を包んだ戦国時代の武将が座っている。しかし、目を凝らすと兜にCHANELの文字。胴の白い部分にもシャネルのマークが家紋としてあしらわれている。彼は紗練家(しゃねる家)の武将なのだ。
練馬区立美術館で4月6日まで開催中の「野口哲哉展-野口哲哉の武者分類(むしゃぶるい)図鑑-」には、野口さんが作った武者が集められている。どれも戦国時代から抜け出してきたかのようなリアルさだが、ヘッドフォンで音楽に聴きほれていたり、真っ赤なソファでくつろいでいたりするのが面白い。学芸員の加藤陽介さんに案内してもらおう。
シャネル武将、見参
「作者の野口さんは歴史や甲冑について勉強しているので、作品は正確、精巧にできています。だけど、遊んでいる。真面目にふざけているのです」
と加藤さんは語る。武者の立体作品も絵画も、驚くほどよくできているからこそ、野口さんのたくらみが生きる。戦国時代から現代にタイムワープしたような、ユーモラスな作品になっている。
一つひとつの作品には、野口さんによる解説がついている。たとえば、この紗練家(しゃねる家)の開祖は、主君に戦功を認められ、南蛮貿易でもたらされたシャネルブランドのハンドバッグをほうびにもらった。そして紗練の姓を名乗り、家紋を使うことを許された。もちろん架空のストーリーだ。
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