その昔、「江戸前」うなぎは「ヘド前」だった!

「続編もの」に込められた日本人のパロディー精神

世の中にあふれる本の数々。どんなに読書好きであっても、その存在すら知らないような珍書(大作家の意外な作品、奇天烈なストーリー)はゴマンとある。そんな「珍書」の蒐集に情熱と財産をつぎ込む古書山たかし氏が、目からウロコの珍書探訪記をお贈りする。連載タイトルの「稀珍快著探訪」は、大正時代に活躍した、主に医学的見地に基づく奇譚の収集家・田中香涯の古今の珍談を集めた奇書『奇・珍・怪』にあやかってつけた。さあ、稀珍快著の世界へ行ってみよう!今回は、明治の文豪、尾崎紅葉を取り上げる。

 

最近はテレビも映画も、「続編もの」や「スピンオフ」といったタイプの作品が目立つ。オリジナル作品の知名度が高く、多くのファンがいれば、その続編や派生作品に関心が集まるのは当然。手堅いマーケティングといえる。

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児童文学名作全集

こうした、いわば「続編ものマーケティング」は、最近になって始まったわけではない。昔から、定番のジャンルとして存在している。誰もが知っている作品の続編を描けば多くの読者の関心を引くためオイシイのだ。

古典的な作品で、突き抜けた面白さを誇るのは、朋誠堂喜三次(ほうせいどうきさんじ)の『親敵討腹鼓(おやのかたきうてやはらつづみ)』である。江戸中期、1770年代に刊行された黄表紙(世相、風俗などを描く本)で、『かちかち山』の続編ものだ。

この作品は、井上ひさし編『児童文学名作全集 1』(福武文庫)に収録されているので、容易に手に入る。

筋書きはこんな感じだ。

かちかち山で親狸を殺された息子の狸は、種が島村の猟師、宇津兵衛(猟師だけに、たねがしま(=銃)を撃つべえ、というダジャレ)を誘って、狐を撃たせてやる。その謝礼として、ウサギへの復讐の助太刀をしてもらうことになった。これを知ったウサギは必死に逃げた。

ウサギは川魚料理屋へ

一方で、かちかち山の爺には、どら息子が一人いた。このどら息子は、勘当され、とある屋敷で足軽として奉公していた身。この屋敷の若様が病気になったが、どら息子は、頭が黒いウサギの生胆を食べさせれば治るという話を聞きつけ、かちかち山のウサギの頭が黒かったことを思い出す。

どら息子は、「母(婆)の仇を 討ってくれた恩のあるウサギではあるが、肝を持っていけば主君への手柄になる」と、思案に暮れる。そこへ遂に狸に見つかってしまったウサギが川魚料理屋にかくまってもらう場面に出くわす。

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