その昔、「江戸前」うなぎは「ヘド前」だった! 「続編もの」に込められた日本人のパロディー精神

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地球が眼下に広がる宇宙的な視点

桃太郎討伐を宣言した苦桃太郎は、王鬼が特別に下賜しようとした鉄棒を、「桃太郎を倒すのにこんなものは要らぬ」と大言壮語して拒否。その後に現れた毒龍、白毛の大ヒヒ、牛サイズの狼を家来とする。そして彼らには、きびだんごの代わりに人間のシャレコウベを与えたのだった。

彼らは毒龍の神通力によって呼び寄せた雲に乗って日本を目指す。ここの挿絵は思い切って引いたアングルで、球体の地球が臨める宇宙スケールの構図となっている。ここまでの一気呵成の筋運びにはワクワクさせられっぱなしである。

ところが、この毒龍、あり得ないくらい頭が悪く、物凄いスピードで飛んだために一瞬で日本を通り過ぎ、はるか彼方まで飛んでいってしまう(書いてある距離を計算すると約5光年・・いくらなんでも遠くへ飛びすぎだ)。

一日経過してからようやく何かがおかしいと気付いた苦桃太郎は怒り、毒龍に対して戻るように命令する。しかし、アホ龍ゆえ、戻りすぎては慌てて引き返し、またもや通り過ぎ、というベタなコントを繰り返す。そうこうしているうちに、龍の神通力が薄れていく。そのせいで哀れヒヒと狼は海中に落下、たちまちワニザメに食われてしまう。

苦桃太郎と毒龍は仲間割れ

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毒龍の落下場面。かなりグロい

龍のあまりのトンチキぶりに激怒した苦桃太郎と毒龍は仲間割れして喧嘩を始めるが、苦桃太郎の怪力はさすがのもの。毒龍を引きちぎり、バラバラにしてしまう。

当然のことながら、龍の神通力はなくなってしまう。そうすると、当然のことながら、苦桃太郎も海中に落下。あえなく墜落死を遂げるのであった。

ワクワクして読み進めている時から、ちょっと不安があった。「中盤まで大きなスケールで話が展開してきたが、残りページが極端に少ない。大丈夫なのだろうか」と。案の定、尻切れトンボのひどい結末が待っていた。

読み終わった時は思わず、松田優作ばりに「なんじゃぁこりゃぁっ!!」と本を床に叩きつけそうになってしまった。しかし、ここで高価な古本をダメにするわけにはいけない。ジッとこらえてやさしく本を閉じたのであった。

古書山 たかし 古書蒐集家

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こしょやま たかし / Takashi Koshoyama

書籍、レコードなどの稀少な出版物を蒐集しているうちに、家の中は資料の山。その整理をめぐって家族との論争が絶えないのだが、それでも蒐集の手を緩めることはない、情熱の人。出張の折などには、古書店めぐりを欠かさない。「古書山たかし」は、もちろんペンネーム。実は会社四季報にもその名前が掲載されている上場企業の経営者だが、その正体はヒ・ミ・ツ。もちろん社業を軸に据えているので株主の皆様、ご安心ください。

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