3.企業規模別の離職率の傾向
厚労省の「新規学卒就職者の離職状況」には、事業所の規模別の新卒3年内の離職率も集計しているが、企業規模に反比例して離職率が低下するという結果になっている。
2015年度入社者の3年内離職率で見ても、全体平均が31.8%に対して、従業員5人未満の事業所が57.0%、5~29人の事業所が49.3%、30~99人が39.0%、100~499人が31.9%、500~999人が 29.6%、1000人以上が24.2%という結果になっている。その背景にある要因も含めて特徴を列挙してみた。
・従業員数が多ければ多いほど離職率は低下する
・30名規模に満たない企業だとおよそ半数の新入社員が3年以内に辞めている
・大企業であればあるほど、教育体制が整備されていると考えられる
・大企業であればあるほど、収入が安定していると考えられる
・大企業であればあるほど、転職に対する心理的ハードルが高くなると考えられる(大企業の安定を捨てるリスクを回避)
業種、職種、企業規模ごとの離職率の特徴から、「なぜ新卒3年以内に3割が退職するのか」についての理由を挙げると、次のとおりとなる。
2. 学生が集まりやすい(イメージしやすい)仕事は総じて待遇がそこまでよくない
3. 仕事のネガティブな側面を把握せずに就職している(意図的に企業が伝えていない可能性大)
4. 中小企業やベンチャー企業といった教育体制が整っていない環境でやっていけるだけの耐性、主体性が学生時代に身に付いていない
どちらかというと学生側の落ち度という側面で挙げているが、現状の学校教育にも問題があると思う。学問中心の教育で、社会に出てから、どんな仕事があり、今の社会はどんな状況で、自分たちはこれからどう生きていけばいいのか、といったキャリア教育が不足していると思っている。
ファーストキャリアから学べれば短期離職もプラス
筆者は持論として、「離職したとしても、最初の就職(ファーストキャリア)から学んだことを評価」してもいいと考えている。
普通の学生であれば「働く動機」「自分の強み・弱み」「世の中にどんな仕事があるのか」といったことを知らない状態で就職している。だから、離職してしまうことはネガティブなことばかりではなく、ポジティブな側面もあると思っている。
短期離職したこと自体は企業からすると、「また辞めるのではないか」というネガティブな出来事になる。そのため、短期離職からの学びがあるか、明確なキャリアビジョンを持てているかが、最低限必要となる。「ただ辞めました」「辞めたけど全部周りが悪い(自分は悪くない)」といった「離職をプラスに転換」できていない人に関しては、厳しい現実が待っている。
短期離職したことで、自分と向き合い、自分の性質に合った適職を探すことができる機会になるのであれば、新卒3年以内の離職は長い人生で見ると、むしろ必要な経験なのではないかとすら思う。
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