「センター試験の大改革」に秘められた深い意味 大学入試センターの山本廣基理事長に聞く
1回目記事:池上彰×佐藤優「2020年教育改革で起きること
2回目記事:「大学で遊んだだけの人」が会社で行き詰まる訳
入試に表れる“ふたこぶラクダ”現象とは?
佐藤優(以下、佐藤):センター試験の問題自体は、国際基準の学識を測るという点から見ても、よくできていると思います。ただ、原則全教科受験という形になっていれば問題ないのだけれど、1科目つまみ食いできるとか、科目を自由に組み合わせられるとかで、試験が複雑系みたいになっているんですね。そこにさまざまな受験テクニックの入りこむ余地も生まれて、結果的にそのよさが十分発揮できない状況になっているような気がします。
山本廣基(以下、山本):おっしゃるとおりで、非常に複雑です。さらに今ご指摘のことに加えて、国公立だけだった共通一次のときとは違う、悩ましい問題があります。
今、センター試験の受験生は約55万人いるのですが、だいたい4分の1ずつ、4つのグループに分類できるんですよ。国公立専願、国公立・私立併願、私立専願、そして残りの4分の1は何かというと、大学から成績提供の請求がない人たちです。例えば、すでに推薦やAO入試で合格しているけれど、一応受けておこうという人たちです。30年前とは、受験者層が様変わりしているんですね。
佐藤:そのとおりです。
山本:でも、自分が「残りの4分の1」の受験生だったらどうでしょう? 是が非でも高得点を取らなければ、という気持ちにはならないと思います。
池上彰(以下、池上):それはそうだ(笑)。
山本:その結果、誤解を恐れずに言えば、その層が平均点を引き下げることになるのです。ところが、そういう受験生も含めて平均点を60点程度にしようとすると、共通一次時代よりも、問題をかなりやさしくせざるをえません。
佐藤:ということは、母集団が正規分布していないわけですね。グラフにすると、得点分布が真ん中で高くなるのではなくて、”ふたこぶラクダ”みたいなカーブになっている。
山本:そんなに極端なことにはなりませんが、分布の形としてはいびつになるのは否めません。