「センター試験の大改革」に秘められた深い意味 大学入試センターの山本廣基理事長に聞く

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池上:平均点が下がると「今年の問題は難しかった」と言って騒ぐのだけれど、かつては国公立志望オンリーだった受験生が「多様化」すれば、平均点は下がって当たり前。テストの本来の趣旨からすれば、見かけの得点ではなく、共通一次時代の平均60点の問題レベルを維持するのが筋だと思うのですが。

山本:まったくそのとおりだと思います。ところが、メディアや高校サイドは、「難しくなったではないか」と言うわけです。

佐藤:「ますます学力が低下している」と言ったり。まず、実情をきちんと理解してもらう必要がありますよね。

山本:あえて付け加えれば、公平を期すという理由で、科目間の平均点に20点を超える差がついたときには、得点調整を行うことになっているんですね。これもメディアの大関心事ですが、どう調整するのか、そもそも調整することが「公平」なのかというのは理論的には難しい問題です。

池上:完璧な答えは、誰にも出せないんじゃないですか。

山本:そうした試験の中身に関わる話は、今までタブー視されていました。しかし、おっしゃるように実態を知ってもらわなければ、改革もままなりません。最初に言ったように、私は必要なことはできるだけ発信していこうと考えているんですよ。

ただし、今お話しした得点分布のデータなどは、ちゃんと理屈を聞いてもらえるときにはいい素材なのですが、それだけが独り歩きするとまた別の問題が生じたりする危険性があります。ですから、目的や場面に応じて結構、神経を使っているんですよ。内輪の話になりますけれど。

池上:今の指摘は、従来センターの内部の人たちしか知らなかった話ですが、大学入試の根幹に関わる問題ではないでしょうか。実態をオープンにして、教育関係者が正しい認識を持つ意味は、非常に大きなものがあると思います。

佐藤:同感です。

記述式の導入は高校生へのメッセージでもある

池上:では、2021年スタートの新テストの中身に話を進めましょう。なんと言っても注目されるのは、国語と数学の一部に記述式問題を採用することです。

先ほども話に出たように、選択式であっても練りに練ったものを出題していたわけだけれど、あえて記述式の導入に踏み切ったのはなぜか? 同時に書かせるのはいいけれど、採点はどうするのか? この点についてお聞かせください。

山本:われわれは、2021年からの導入に向けて、高校生を対象にした試行調査(プレテスト)を2017年と2018年の2度実施しました。2018年の国語の記述式は、言語に関する2つの文章を読んで設問に答えるという問題。そこで問われたのは、2つを関連付けながら構成や展開を捉えるといった、テキストを正確に読み取る力、思考したことを表現する力です。

佐藤:実際に書かせる意味は大きいと思うんですよ。逆に言うと、記述式が入らない試験というのは、とにかく端から端まである種の物量主義で覚えこむ「パターン暗記」で、ある程度までは攻略できるんですね。受験生は若くて記憶力がいいですから。受験産業の得意なのは、そういうテクニックをたたき込むことにほかなりません。

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