恐竜界は日進月歩で、毎月のように新種が報告され、情報が飛び交う。書籍だけでも、国会図書館で検索すれば7556件がヒットする。ちなみにほかの絶滅爬虫類は、翼竜や魚竜は各200件余、哺乳類型爬虫類(正確には単弓類)に至ってはわずか15件。世の関心の高さが違う。
今日、子どもの恐竜知識には目を見張るものがある。図鑑には、恐竜の想像図や名称だけでなく、機能や生態などの新たな知見が満載され、子どもはそれを貪欲に吸収する。一時代前の知識が通用する世界ではない。子どもに質問されたら大人の権威を保てるか――というわけで、今回の記事がお役に立てれば、幸いである。
恐竜の時代は、始まりを保守的に2億3000万年前とみても、白亜紀末までの約1億6000万年に及ぶ。「恐竜」は約千種の生物の総称で、単一種とこれを比べては不公平だが、それにしてもホモ・サピエンスの生きた20万年との差は大きい。ホモ属中で、最も長く存続したのは、エレクトス(北京原人等)だが、われわれがエレクトスの200万年を上回るのは難しく、恐竜越えは論外であろう。
恐竜とは「直立する爬虫類」である
恐竜とは何か。
最近の定義は、「現生鳥類とトリケラトプスの直近共通祖先(MRCA)及びその子孫」である。「仙椎が3個以上で云々…、」式の古い定義は、仙椎が2個だが他の特徴は恐竜という化石が見つかっただけで、混乱を来す。現在の定義はその心配はないが、姿形や生態のヒントを与えてくれない。もっと分かりやすい定義はないか。
大人が知っておくべき定義は、恐竜の命名者リチャード・オーウェンが当初から指摘した、「直立する爬虫類」がよい。「鳥類を含む」と加えれば、より今日的である。
この直立とは、ペンギンのように背骨が垂直なことを指すのではない。犬馬のごとく、足をまっすぐ下に伸ばすことである。現生の爬虫類は、足を横に張り出し、膝をガニ股に広げた姿勢で歩く。これは移動効率が悪い。四つんばいになり、ひじを横に張って歩いてみればよくわかる。恐竜の繁栄は、足をまっすぐ下に伸ばす姿勢を獲得したことで始まった。
直立体制を可能とするため、恐竜の腰骨は、寛骨臼(かんこつきゅう)という軸受けの穴が貫通した空間を持ち、そこに大腿骨の骨頭がピタリとはまる。この構造は頑健で、体重をしっかり支え効率的に歩ける。哺乳類も同様の構造を持つ。
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