恐竜以外の爬虫類の寛骨臼は浅く、脚は横に張り出す。絶滅した古代ワニには、直立に近い体制のものがあったが、寛骨臼が貫通せず、真正の直立ではない。とはいえ腰高に素早く走り回るワニの姿を想像すると、味わい深いものがあるが。
さて、恐竜は竜盤類と鳥盤類からなる。区別は恥骨の形状による。余談ながら、オーウェンに敬意を表し、今日の定義「鳥類とトリケラトプス」を、最初の命名種を用いて「メガロサウルスとイグアノドン」と言い換えてもよい。
鳥類とメガロサウルスは竜盤類、トリケラトプスとイグアノドンは鳥盤類で、それぞれの類からどの代表を選んでも、同じ直近共通祖先に行き着く。
竜盤・鳥盤の2区分は恐竜を包括でき便利だが、鳥は鳥盤類ではなく竜盤類で、名称が初心者には紛らわしい。さらに近年、竜盤類は発生系統的に寄せ集めにすぎないとの説があり、「竜盤類消滅か?」と取りざたする向きもあるが、これは尚早であろう。
哺乳類と同様に4点セットがあったか
さて、直立の得失を考えよう。エネルギー消費の高さと、足を伸ばす姿勢には強い相関がある。これは、代謝活性と体温維持ともつながっている。足をまっすぐに伸ばす現生哺乳類と鳥類は、温血(正確には内温性)動物で、体温を一定に維持する。逆に、足を曲げた姿勢を取る動物は皆、冷血(外温性)である 。
さて現生爬虫類の体は、哺乳類や恐竜よりはるかに省エネにできている。人は、長く立っているだけで疲れるが、トカゲは、腹ばいで動かずにいれば、いつまでも疲れない。より重要なことに、食事が少量で済む。一部のカメには、水中にもぐって一日中呼吸すらしないものもいる。これが白亜紀末の絶滅を免れるのに役立ったと考えられる。
代謝が高く多量の食物を必要とする温血性は、直立による高い運動性能と相性がよい。温血動物には、保温ための外装が必要で、哺乳類は毛、鳥類は羽毛で保温を行う。すなわち哺乳類は、「直立-高代謝-温血−毛」の4点がセットで強く一貫している。イルカが脚を失い、カバに毛が少ないなどの例外は、二次的に生じたものである。
恐竜の温血説は変遷し、古くはすべて冷血、後に一部の「羽毛恐竜」は温血と変わった。近年の研究で、鳥類と別枝の鳥盤類に羽毛化石が発見され、鳥を含む全恐竜の共通祖先MRCAに羽毛があった可能性が高まった。では2次的喪失を除き、恐竜もすべてが「直立-高代謝-温血−羽毛」という4点セットを共用するのか。否定はできない。
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