ノーベル賞の大発見は「偶然の産物」だった 「偶然を見逃さないことも科学研究では大切」

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スウェーデンのカロリンスカ研究所は、今年のノーベル医学・生理学賞を、免疫システムを用いたがん療法で画期的手法を開発した米国のジェームズ・アリソン博士(左)と京都大学の本庶佑・特別教授(右)に授与すると発表した。本稿では、その功績について解説したい(写真:TT News Agency/Fredrik Sandberg via REUTERS)

「発見はかなり偶然。私はがん学者ではない。がんの薬を探していたわけではない」。2014年、がん免疫治療薬開発の経緯を尋ねたところ、京都大学の本庶佑(ほんじょ たすく)特別教授はまずこう切り出した。しかし、その偶然を見逃さなかったことこそが、幸運をもたらしたのだ。

本庶氏が2018年のノーベル医学・生理学賞を受賞したことを、心から喜ばしく、また日本人として誇らしく思っている。筆者は、日本発の新薬開発に関する執筆をライフワークとしており、『世界を救った日本の薬』執筆のため、今回の受賞理由となった画期的ながん免疫治療薬『オプジーボ』(一般名ニボルマブ)の開発について、本庶氏に何度か取材させていただく機会を得た。

まずは、がん治療に革命を起こすことになった、がんの免疫治療について解説したい。

オプジーボの価値はプライスレス

2014年に世界で初めて日本で承認されたオプジーボは、当初、年間3000万円という薬価の高さばかりが話題になったが、人類にとってはプライスレスな価値を持つ薬だ。

世界中で年間900万人近い命が、がんにより失われる。日本では3人に1人ががんで亡くなっている。外科療法(手術)、放射線療法、薬物療法(抗がん剤)とあの手この手を尽くしても、再発・転移などで体内に広がったがん細胞には太刀打ちが難しい。がんは、いまだ人類が克服しきれていない難敵の1つといえるだろう。

本庶氏と共同受賞者である米国テキサス大学のジェームズ・アリソン(James P. Allison)氏は、そこに免疫療法という武器を開発して、新たな扉を開いた。

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