ノーベル賞の大発見は「偶然の産物」だった 「偶然を見逃さないことも科学研究では大切」

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免疫チェックポイント分子では、PD-1に先立って、CTLA-4が発見されている。PD-1とCTLA-4は、免疫の違った局面を阻害している。1987年にフランスの研究者によりマウスの免疫細胞でCTLA-4が見つかり、1990年代に、CTLA-4は免疫応答の抑制に関与しており、ブレーキ役として働いていることが解明されてきた。

これをがん治療に生かそうと考えたのが、今回、本庶氏とノーベル賞を共同受賞したアリソン氏だ。抗CTLA-4抗体は、世界初の免疫チェックポイント阻害薬『ヤーボイ』(一般名イピリムマブ)として、2011年にメラノーマで米国の承認を得た後、日本では二番手の免疫チェックポイント阻害薬として2015年に承認された。

難敵がんに対抗する“道具”が増えたことは大きな朗報で、免疫療法における革命であることは間違いない。

10月1日夜、京都大学で会見する本庶氏(写真:ロイター/共同)

本庶氏は、1942年京都市生まれの76歳。山口大学医学部耳鼻咽喉科学の教授だった父親の転居に伴って、山口県で育った。

自らも医学部進学を選んだのは、父が医師だったことに加え、幼い頃に野口英世の伝記を読み、「医師として研究者として多くの人の役に立ちたい」と思ったことが強く影響している。

1960年に京都大学医学部に入学したが、インターン闘争に明け暮れた学年で、患者を診た経験はほとんどない。大学院では基礎医学である生化学を修め、恩師の早石修氏から、学問の進め方、世界を相手にするという国際的な視野など、研究者として基本的なことをすべて学んだ。

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