ノーベル賞の大発見は「偶然の産物」だった

「偶然を見逃さないことも科学研究では大切」

早石氏からは、短期に成果を求めないよう、「運・鈍・根」という言葉を掛けてもらったという。また、早石氏の師であった古武弥四郎氏の「凡人は働かねばならぬ。働くことは天然に親しむことである」も、本庶氏の心に刻まれている。「生命科学は、頭の中で考えるだけでなく、自然を観察し、まず疑ってかかるべきだという姿勢を受け継いだ」(本庶氏)。

免疫に魅せられたのは、米国に留学してからで、基礎研究で次々と成果を生み出していって、今回のノーベル賞も呼び込むことになった。

76歳のいまも第一線で研究

1人の医師が、一生涯の間に治療する患者の数は限られるが、新しい治療法を開発すれば、その可能性は無限大で、世界をも救うことができる。本庶氏は、身をもってそのことを示し、がん患者に希望を与えてくれた。

「基礎医学と言っても医学であり、治療に活かせる機会があれば非常に良いとつねに思って研究している。治療に直接関わったり、患者さんに接したりする機会はないが、いただいた感謝の手紙を励みとしている」(本庶氏)

本庶氏は、今もなお研究者として第一線に立ち、免疫学の基礎研究を深めており、現在のPD-1治療で効かない人を効くようにすることにも挑み続けている。具体的には、有効効果予測のためのマーカーと併用することで奏効率を上げるようにする研究なども進められている。

2015年6月24日、週刊東洋経済の取材にて(撮影:尾形文繁)

PD-1発見から薬が上市されるまでには、22年間の研究が積み重ねられている。本庶氏の語った「最初は海の物とも山の物ともつかないものから、芽が出てくる。基礎研究を幅広く根気強くサポートして、芽が出てきたら育てるという長期的な戦略できちんと調整してもらいたい」という言葉の重みを、日本の科学界は真剣に受け止めなくてはならない。そして、「偶然を見逃さないことも、科学研究では大切」(本庶氏)という言葉も心に響く。

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