ティラノサウルスの両眼視の度合いは、ハンター性質を裏づける。スカベンジャー(屍肉あさり)であったとする説もあるが、骨格を見る限りハンターを極めたデザインとしか考えられず、到底、信じられない。
余談だが、人間も両眼が前を向く。類人猿は樹上生活から進化し、木を飛び移る運動から立体視の必要があった。
さてティラノサウルスの成体は走れなかったと考えられる。動きが鈍いという意味ではない。「走る」とは両足が宙に浮く瞬間があることを言うが、推定6トンの体重では、一歩ごとにジャンプすることは難しい。しかし、足が長いので、歩いてたいていの獲物を上回る速度が出せた。ジュラシックパークの映画でジープを追うティラノは、走らず早歩きしていたのである。
大量の植物を消化する「竜脚下目」
次に巨大恐竜の代名詞、竜盤類の竜脚下目を概観しよう。長い首と尾、太い胴体、推定数十トンの体重から、いかにも巨大生物の風格を体現するグループである。アパトサウルス、ディプロドクス、カマラサウルス、アルゼンチノサウルス、スーパーサウルスなど、全長20~30メートル超級の種が多数属する。
竜脚下目は 、大量の植物を、掃除機のごとくに食べ集めるマシンである。首と尾を前後に浮かせ、橋梁のように四肢と脊柱で支える。さらに、長い首をスイープさせ、広範囲を掃くようにしてシダ類などの裸子植物を食べた。頭は軽量で、歯は食いちぎることに特化した櫛の歯のような形状で、噛まずに丸呑みし、大量の胃石で食物をすりつぶして消化していた。栄養価の低いシダ類を大量に腹に詰め込む戦法が、この体型を生み出した。
同じ植物食でも、後の白亜紀に栄えた鳥盤類のカモノハシ竜が、数千にも達する奥歯と頬をもって被子植物を咀嚼(そしゃく)したのと対照的である。プラテオサウルスなどの古(原)竜脚下目も、類似した外形を持つ。これらは、一時は竜脚下目の祖先とされたが、指の数がドローの法則(生物進化の過程で、一度失われた形態は再び獲得されない)に合わないなどの理由から、独立に類似の体型を発達させたものと考えられる。この体型も、各地で繁栄につながった。
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