新しいアイデアを生む人の「積み上げ」の習慣 「量が質に転化する」境目はきっとある
マルコム・グラッドウェル氏の著作『天才!成功する人々の法則』(講談社)には「10000時間の法則」と呼ばれる、大きな賛否を呼び起こした考え方が紹介されています。
たとえばプロレベルのバイオリン奏者になるのであれ、スポーツ選手や、芸術家や、学問のプロになるのであれ、必要なのは天賦の才能ではなく、「累計で約10000時間の練習や特訓を積み上げることができる」本人の努力であり環境だという統計的な考え方です。
この10000時間という数字や、その内容については議論があるものの、大切なのは「量が質に転化する」決定的な境目があるということです。
読書や執筆に限らず、絵を描いたり動画を作成したりといった創作的な活動でもかまいませんが、情報との触れあいを“積み上げる”ことによって、それが質的にありきたりなものから特別なものに転換するのです。
知的な「捕らぬ狸の皮算用」
ここで、捕らぬ狸の皮算用をしてみましょう。もしみなさんが平均的な大学生と同程度の読書を毎日しているなら、それは1日に平均で約25分、ページ数にして(本にもよりますが)ざっくりと40ページほどと見積もることが可能です(読書時間の値は全国大学生活協同組合連合会、「第52回学生生活実態調査の概要報告」より)。
この数字を、1年で換算すると1万4600ページ。書籍のページ数を平均300ページと仮定すると、48冊に相当します。読書時間が0分の人の割合が半数に迫っている昨今、それなりに読んでいるほうだといえるでしょう。
もし、この1日平均の読書量を1.5倍の60ページにできたならどうでしょうか?
年間の数字は累計で2万1900ページ、冊数にして73冊に達することになります。もしこれを10年間持続することが可能ならば、最終的に1日40ページ読む人と、1日に60ページ読む人の差は14万6000ページに対する21万9000ページ、冊数にして486冊に対する730冊と、244冊の差が生まれます。
ここで言いたいのは、読書が1日40ページでは足りないので60ページに、いや100ページにしようということではありません。むしろ、1日に40ページを読んでいる生活で到達できる場所と、60ページで到達できる場所には明確な違いがあることを、数字として意識してほしいのです。
もし一つのジャンルについてまとまった知識を得たいと考えていて、そのジャンルに存在する代表作を200冊程度だと見積もった場合、1日に何ページ読んでいれば3年以内にそれを網羅することができるかという発想です。
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