新しいアイデアを生む人の「積み上げ」の習慣 「量が質に転化する」境目はきっとある

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同様の計算は、絵を描く枚数や、観る映画の本数、作る作品の点数から、スキルを習得するのに許されている時間など、どんな活動の「積み上げ」にも応用することができます。

毎日の生活の小さな活動量の違いは、3年後、5年後、そして10年後に大きな違いとしてやってきます。こうした発想を使って、未来を設計することが可能になるのです。

日常の活動を「設計」する

プロの写真家が初心者にアドバイスをする際、ほぼ間違いなく出てくる言葉が「とにかくシャッターを切ること」という助言です。しかしこれを数字として意識する人はどれだけいるでしょうか。

たとえばみなさんが写真の腕を磨きたいと考えていたとします。プロの写真家のように累計何十万枚も撮影することは無理でも、せめて1年に10000枚の写真を撮影したいと考えた場合の活動量は、1日あたり27.4枚になります。用事があったり風邪をひいて寝込んでいたなど理由が何であっても、この数字以下ならば目標は達成できません。また「日常のスナップだけではなく、テーマ性のある写真を何割撮影したい」といった目安をここに導入してもいいでしょう。

10年でここまでの数になる(写真:『知的生活の設計―――「10年後の自分」を支える83の戦略』)

こうした数字を意識することで、未来に先回りした思考方法が可能になります。

「週末に必ず数百枚撮影するには、ある程度散歩に出なければいけない」「次の撮影場所を1週間前までには考えなければネタに困ってしまう」といった形で、目標を達成するための行動計画を決める視点に立つことができるようになるのです。

つまり、未来にどこまで到達したいかを意識して今日の活動量を決めることで「知的生活を設計する」わけです。

このように書くと、「読書は冊数をこなすものではない」「写真は撮影した回数ではない」という反論が当然出てくると思います。それはもちろんそのとおりで、こうした設計は1冊の本の魅力や感動、1枚の写真や絵の美しさとは別物です。

むしろこうした設計の考え方は、どれだけの本を読めばあるジャンルに対して一定の理解が得られるのか、どれだけ写真を撮影すれば自分自身の作風を生み出せるのかといったように、長い目でみた活動の行き先を意識した考え方といえます。

知的生活を設計することは、やがて到達したい未来を意識しながら、今日を楽しむための考え方といっていいでしょう。

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