現役人事が語る「優秀なのに選考されない人」 就活で企業がホンネでほしいのはこんな人物

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まず1つめの「必要採用人数」の話です。

これは誰でもわかる話ですが、今は売り手市場のため、どの企業も必要採用人数の確保に苦労しています。求める人物像を決めて、ピッタリの学生だけを採用することにこだわっていたら、人数が確保できないということが起こりえます。人気企業は別として、多くの企業がどこかで妥協をしているのです。

多くの企業が求める人物像の中でも、絶対にはずせない要件(MUST要件)と、あったらよい要件(WANT要件)とで、実際にはわけています。公表された求める人物像の全てを満たしていなくても、「どれか満たされていれば、可能性はある」くらいに考えてよいと思います。

2つめの「公表している求める人物像」のズレですが、そもそも求める人物像がしっかり練られていない企業が少なくありません

新卒社員の採用の場合、基本的に総合職採用が多く、誰がどんな職種につくかわからないという特性があります。本来は職種によって適性はだいぶ変わってくるのですが、採用してから配属を決めていくため、まずはどんなところでも活躍できそうな基準を軸に、非常にあいまいな人物像を設定しまいがちです。

採用レベルが低い企業になればなるほど、掲げた人物像が判断基準として成立していないこともあります。採用レベルの高い企業の場合、企業の理念と、その理念をベースにしたビジョンまでを考え、ビジョンを達成するために不足している人材、必要な人材はどんな人材かを考え、そこから求める人物像を設計しています。採用レベルが高い企業は、自社に必要で合う人材を適切に決めているのです。

「どこでも通用する人物像」を掲げる企業も

一方、採用レベルが低い企業は、理念が適当か、もしくはビジョンがありません。本当に必要な人材が見えていないため、未来ではなく、今たまたま活躍が目立つ人材のイメージや一般的に好まれる人物のイメージを重ねあわせ、「コミュニケーション能力がある人」「情熱のある人」「積極的な人」というような、どこでも活躍できそうな、よくある「求める人物像」を作ってしまいます。

「コミュニケーション能力がある人」「情熱のある人」「積極的な人」というのは、どの企業でも求める人物像ですが、残念ながらいずれも能力を測りにくく、何を根拠に能力があると判断するのか、不明瞭なものばかりです。

たとえばコミュニケーション能力について、「いつでも気軽に連絡がとれる友だちが300人います」という学生がいた場合、それでコミュニケーション能力があると判断する人もいれば、「その300人の内訳は? 学生以外の友だちが100人以上いるなら評価できる」「そもそも友だちの数はコミュニケーション能力の基準にならない」などと、判断は人によってあまりにも違ってきます。何がコミュニケーション能力かという定義も、人によってだいぶ異なるでしょう。

その結果、求める人物像として掲げたものの、採用の判断基準としては成立していない事態が起こります。

実際には、コミュニケーション能力は普通に会話が成立するレベルがあれば十分で、それよりも煩雑な事務をミスなくこなすことができる人材が必要なのに、本当に必要な人物像が練られていないため、求める人物像では、ただ「コミュニケーション能力がある人」と公表してしまっていることがあるのです。

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