「未来のミライ」が切りひらく日本映画の未来 「Jポップ化」するアニメ映画を超えた先に

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大冒険活劇やファンタジーも恋愛もなく、ある家族の日常の風景の中で、親子愛をテーマとした5つのエピソードが、98分の中に淡々と並べられている映画――冒頭で書いたように、事前の期待は見事に裏切られたものの、私は、このような意欲作を、大いに評価したいと思うのだ。

――と、美しく終わりたいところだが、しかしこの映画、評価が伸び悩んでいる。サイト「映画.com」の「評価・レビュー」の得点を以下に。

・『未来のミライ』: 2.6点
・『おおかみこどもの雨と雪』: 3.7点
・『バケモノの子』: 3.7点
・『サマーウォーズ』: 3.9点
・『時をかける少女』: 4.0点
・『君の名は。』: 4.0点
・『千と千尋の神隠し』: 4.0点
(出典:「映画.com」 8月7日時点)

この場合、点数はあくまで参考にすぎないだろうが、それでも先に上映時間を比較した作品の中で、点数は最も低くなっている。

その理由はいろいろあろうが、おそらく先に挙げた「期待の裏切り」をストレートに「裏切り」と受け止め、幻滅した人々が多かったのだろう。

なぜ伸び悩んだのか

では、この映画にも寄せられたであろう、世の中のアニメ映画への「期待」とは、いったいどのようなものなのか?

「大冒険活劇やファンタジー、さらには恋愛が交錯している、2時間を超える大きく複雑なストーリーがあって、快活な美少女とクールなイケメンが、タイムリープして、空を飛んで、いくつもの伏線が見事に回収される映画を!」

私はこの「期待されるアニメ映画像」に、音楽シーンにおける「Jポップ」に近いものを感じる。

「Jポップ」とはつまり、大作主義、構成の複雑さ、抑揚のあるメロディ、派手なコード進行や転調、そして「翼広げすぎ・瞳閉じすぎ・君の名を呼びすぎ・会いたくて会えなさすぎ・桜舞いすぎ……」など、露骨に涙腺を攻めてくる歌詞を持つ結果、聴いた後に、過剰な満腹感を約束する音楽を指す。

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