「未来のミライ」が切りひらく日本映画の未来

「Jポップ化」するアニメ映画を超えた先に

つまり、この映画の大プロモーションを受けて期待した、「大ヒットを狙って、大冒険活劇やファンタジー、恋愛モノの要素を、これでもかこれでもかと、あざとく入れてくるだろうなぁ」という邪推は、見事に外されたのである。

2つ目の「裏切り」は、ストーリーの分断性だ。『バケモノの子』にしても、興行収入250億円という、とんでもない大ヒットとなった『君の名は。』にしても、映画全編を覆う、大きく複雑なストーリーがあり、最後まで手に汗握る展開を売りとしていた。しかし、『未来のミライ』にそれはなく、(一貫したテーマはあるが)一見バラバラなエピソードを5つ並べた構成になっているのだ。

そんな独特な構成の結果、映画館の暗闇の中で、複雑なストーリーを必死で整理・解釈しなければならないというストレスがなく、(妙な言い方だが)爽快な読後感が残るのだ。このことも、とりわけわれわれ世代にとっては、とても魅力的なことに感じた。

特徴的ともいえる映画の「短さ」

そして最後の「裏切り」は、これも「爽快な読後感」につながる話なのだが、上映時間の短さだ。締めてたったの98分。ここで細田守監督作品を中心に、主たるアニメ映画の上映時間を比較してみる。

・『未来のミライ』: 98分
・『時をかける少女』: 98分
・『君の名は。』: 107分
・『サマーウォーズ』: 114分
・『おおかみこどもの雨と雪』: 117分
・『バケモノの子』: 119分
・『千と千尋の神隠し』: 124分
(出典:「映画.com」)

日本における歴代興収ランキング第1位に輝く(308億円)、アニメ映画の金字塔=『千と千尋の神隠し』が2時間を超えていたことにまず驚くが、これを見ていると、細田守作品も少しずつ長編化してきたことと、その中で『未来のミライ』は、『時をかける少女』と同じ90分台に戻ったことがわかる(余談だが、話題の『カメラを止めるな!』も96分と短い)。

これもわれわれ世代に特化した話かもしれないが、映画で2時間(120分)超えは、正直長いと思う。この件に関して、この映画の主題歌を担当した山下達郎はLINE NEWSの独占インタビューでこう述べている。

「しかも『未来のミライ』は上映時間98分でしたよね。これ、本当にすばらしいと思うんですよね。最近の映画は昔に比べてとにかく長い。映像作家趣味なのか、カットが長い」(出典:LINE NEWS「『未来のミライ』公開記念 山下達郎×細田守監督スペシャル対談
次ページ世間の評価は…
ライフの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • コロナショックの大波紋
  • 日本野球の今そこにある危機
  • 新競馬好きエコノミストの市場深読み劇場
  • ほしいのは「つかれない家族」
トレンドライブラリーAD
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
広告大乱戦<br>デジタル化で進む“下克上”

「ついに」か「ようやく」か。ネット広告費が初めてテレビ広告費を超えました。デジタル化の大波の中で、広告業界は“異種格闘技戦”の時代に。グーグルと組んで購買につながる広告商品を生み出したマツモトキヨシなど、激変期の最先端事例を紹介します。