映画「グレイテスト・ショーマン」成功の背景 アカデミー賞で無冠も大衆を惹きつける理由

✎ 1〜 ✎ 5 ✎ 6 ✎ 7 ✎ 最新
拡大
縮小
3月5日、米ハリウッドで開催された第90回アカデミー賞授賞式で「This Is Me」をパフォーマンスしたキアラ・セトル(写真: REUTERS/Lucas Jackson)

確かに身体は感動している。瞳もずっと湿り続けている。でも、頭の中で、自分がストーリーのどこに感動しているのかがわからない。言わば「理由のない感動」をもたらす映画――率直に言えば、私にとっては、そういう映画であった。

冷静に考えれば、素材自体はなかなか感情移入しにくいものである。「19世紀半ばのアメリカでショービジネスの原点を築いた伝説のプロモーター」(パンフレットより)と言えば聞こえはいいが、実際は、低身長の「親指トム将軍」や、ヒゲの生えた女性歌手や、ほかにも巨人や、全身刺青の男性などの「ユニークな人」(要するにマイノリティ)を見世物にしたショーで大儲けし、「ペテン王子」と言われた実在の興行師=P.T.バーナムを主人公とした話なのだから。

そのせいか、本国アメリカでも、当初は評論家受けが芳しくなく、初日から3日間の興行収入は全米で880万ドル(約9億5000万円)と伸び悩んだようだが、観客評価は非常に高く、ジワジワと人気が広がり、3月4日時点で、1億6000万ドル(約170億円)の興収を上げるまでに盛り上がったという(出典:Rentrak Box Office Essentials)。

「大衆受け」は非常に良かった

頭で映画を見る評論家が理屈で否定するも(そのせいか、アカデミー賞授賞式では、「ヒゲの生えた女性歌手」を演じたキアラ・セトルが挿入歌「This Is Me」を感動的なまでに歌い切るも、結局無冠に終わった)、身体で映画を受け止める大衆が、しっかりと食いついたということだろう。

この連載の一覧はこちら

対して日本では、公開初日から大ヒット。公開直後の週末(2/17~2/18)でいきなり首位デビュー、翌週末も首位キープ。直近の週末(3/3~3/4)においても、依然3位と高い水準にある(出典:興行通信社)。その上、サウンドトラックは最新3月12日付オリコン週間アルバムランキングで初の総合1位を獲得するヒットとなっている。

それではこの映画が、どのような理由で、この日本において支持されたのだろうか。まずはプロモーションにおいて、昨年、日本で大ヒットした映画『ラ・ラ・ランド』の威を、うまく借用したことがある。

映画『グレイテスト・ショーマン』のヒットの背景を探ります(写真:(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation)
次ページ『ラ・ラ・ランド』を徹底活用
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT