映画「グレイテスト・ショーマン」成功の背景 アカデミー賞で無冠も大衆を惹きつける理由

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突然ですがクイズです。以下の2つの文章の違いを指摘せよ。

(1) 公式サイトの「ABOUT THE MOVIE」のページより:
「ヒュー・ジャックマン×『ラ・ラ・ランド』の製作チームが贈る映画至上最高のロマンティックな感動ミュージカル・エンターテイメント、開幕!」
(2) パンフレット「INTRODUCTION」のページより:
「ヒュー・ジャックマン×『ラ・ラ・ランド』の音楽家チームが贈る映画至上最高のロマンティックな感動ミュージカル・エンターテイメント、開幕!」

そう、違いは「製作チーム」と「音楽家チーム」である。パンフレットより広く見られる公式ページでは、「製作チーム」と大きく表現することで、『ラ・ラ・ランド』のご威光を徹底的に活用するという意識が透けて見える。

実際に、『ラ・ラ・ランド』とこの映画で共通するのは、ベンジ・パセックとジャスティン・ポールという「音楽家チーム」だけである。さらにはこの2人、『グレイテスト・ショーマン』では作詞・作曲を担当しているのだが、『ラ・ラ・ランド』では、作詞しか担当していないのだから、「製作チーム」という言い方は、かなりギリギリだろう(しかし私は、後述する理由で、この件に目くじらなど立てない)。

かくして、『ラ・ラ・ランド』の感動をもう一度という面持ちで、詰めかけた観客も多かったと思われる。そして、『ラ・ラ・ランド』冒頭の、渋滞した道路の上で展開される傑作ミュージカルシーンにも負けない、この映画の冒頭の、ショーの出演者全員による楽曲「The Greatest Show」のシーンを見て、一気にテンションが上がったのではないか。

「映画体感志向」とうまくマッチした

そして2つ目の理由として指摘できるのは、「映画体感志向」との合致である。つまり、微動だにせず静かに「鑑賞」するのではなく、まるでスポーツ観戦やロックフェスに参加するように、映画でも、ライブな盛り上がりを「体感」したいというニーズのことである。

4年前の大ヒット映画『アナと雪の女王』の、スクリーンに表示される歌詞に合わせて歌うことができる「みんなで歌おう版」の上映などをきっかけに、そのニーズは顕在化。最近では、リアルな臨場感を体感できる「IMAXシアター」や「DOLBY ATMOS」の普及、さらには、日本各地で行われている「爆音上映」などが、その「映画体感志向」に応えている。

次ページ正直に言ってストーリーは…
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