米世論調査会社ギャロップによると通勤移動にかかる時間が長い人ほど幸福度が低いとのこと。通勤に1時間を要する人の場合、職場に歩いて通える人と同程度の満足度を得るためには、その人よりも40%多くおカネを稼がなければならないとする研究者もいるとのこと。通勤時間が長いことは多くの人にとって大きなストレスなのでしょう。
混雑のなかで1時間近くもかけて通勤することと、自転車で10分くらいのところに職場がある環境。これだけで比較すれば、アルバイト・パートにも魅力を感じる人はたくさんいるかもしれません。
アルバイト人材不毛地域
さて、こうした通勤時間の現状を踏まえて、会社が置かれた1つの問題について考えてみたいと思います。非正規社員の採用において、勤務地の周辺に住人が少ない場所では、採用に苦労することが明らかではないでしょうか?
こうした地域を筆者は「アルバイト人材不毛地域」と呼んでいます。たとえば、都心部のオフィスや、開発は進むものの住居がない湾岸地域(空港やショッピングモールのそばなど)、また過疎化がすすむ地域(コールセンターやリゾートホテルのそば)などがそうです。
取材していると、アルバイト人材不毛地域に職場を立ち上げ、人手不足により、撤退せざるをえなくなる事例も出ています。
たとえば、ある国際空港の中にある飲食店のケース。
近年、海外からの旅行者の増加に加え、開発されてにぎやかになった空港をデートで訪れるカップルや家族連れが増加。飲食店は終日、混雑が続く状況です。ですから、空港から出店要請を受けた飲食チェーン経営者は「喜んで」開店します。
ところが人材配置に苦戦することになりました。開店当初、オープニングスタッフは既存店の経験者で対応します。オペレーションの大変さからベテランの経験者でないと対応が難しいと判断したからです。
そうして無事に開店すると、店は地元で新規採用をし、ベテランスタッフは別の新規オープンにまわしたくなります。ところが、いつまで経っても新規のアルバイトスタッフが採用できません。
そこで「時給が安いからに違いない」と判断し、時給をあげて募集してみたのですが、それでも応募はありません。それもそのはず、その店から通勤30分以内の地域にはもともと、アルバイトできる人材があまり住んでいないのです。
そのまま、新規採用ができない状況が1年以上も続き、ベテランスタッフから「元の店舗に戻してくれないのであれば辞めます」との話が出てくる事態に。そのベテランスタッフの通勤時間が90分以上になり、それであれば、地元の飲食店からのオファーもあるので、その仕事に移りたいというのです。
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