話は変わるが、現在、メガバンクの人員整理計画が注目されている。みずほフィナンシャルグループが8年後の2026年までに1万9000人を削減する。三菱UFJフィナンシャル・グループは、5年以内で6000人削減。他の大小の銀行も次々に追随するだろう。
当然、これは異次元技術の登場を織り込んでのこと。FinTech(フィンテック)の普及などによって、おそらく、今後10年以内に金融の姿も完全に変わってしまうし、AI(人工知能)技術を駆使して、組織を極端にスリム化するだろう。
異次元技術の先を見て、採用をすべし
もう4年ほど前、オックスフォード大学が発表した、あと10年で「消える職業、なくなる仕事」は、かなりの話題となったが、現在、その速度が加速している。周知の通り、無人自動車、無人スーパー、コンビニ、ホテルのロボット受付案内嬢などは、連日のように報道されている。
その「消える職業、なくなる仕事」のリストには、銀行の融資担当者、スポーツの審判、不動産ブローカー、レストランの案内係、保険の審査担当者、給与福利厚生担当者、レジ係、ネイリスト、簿記、会計、監査の事務員、測定作業員、造園・用地の作業員、建設機械のオペレーターなどが挙げられているが、弁護士もプロデューサーも作曲家も、あるいは医者も教師も、消えることはあるまいが、いまよりははるかに不要になる。20年以内に相当な不要人材が出てくるだろう。
だから、いま人手不足だからといって、採れるだけの員数を採用していると、将来、とりわけ、大企業、中企業では、前述の銀行の例ではないが、人員整理に取り組まなければならないだろう。むしろ、人手不足なら、新しい技術で対応できないか、AIロボットで対応できないか、と考えたほうがいい。
出版業界が氷河期だと言って、嘆いているが、そのような兆候は、PCが出てきたころから囁かれていたし、Amazonが進出してきたときは、かなり危ぶむ声もあった。しかし、出版社も、取次も、書店も旧態依然。騒ぐだけで、真剣に冷静にその対応にほとんど取り組もうとしなかった結果、多くの出版社も取次も書店も次々に消え去っている。出版界だけではない。多くの業種で、業界で、企業で起こっている。そして、消えていけば、職を失う。職を失う人が多くなれば、人余りになる。
ところが、実際は、求人倍率が1.4前後。人が足らないという。なぜか。それは、会社が求めているのは、PCを駆使できる人材。ところが、PCに対応できない人が職を求めているから、「人余りの人手不足」という奇妙な現象が起きている。
そして、PC操作の出来る新卒を大量に定期採用するということで、新卒の就職希望者をかき集めている。しかし、会社はそれでいいのか。いま、人手が不足しているからと言って、「今」を基準に人手を求めていいのか。技術の異常な進展を推測し、予想し、対応することを考え、極力、採用を抑制する必要はないのか。多分、「銀行の二の舞」になるのではないか。
しかし、そのとき会社は泣かない。泣くのはリストラされる社員である。採用するときには、頭を下げ、手もみして迎え、10年、20年もするとゴミを捨てるように解雇する。だが、それは人の道に反しはしないか。人手不足に、企業はご都合的対応をしていいのか。しっかりと、将来を見据えて、しっかりと若者を採用しておかなければ、必ず、彼らを泣かせるだけでなく、彼らから、しっぺ返しを受けるだろう。いまの家電メーカーの呻吟を反面教師にすべきだ。
「人を大切にする会社」「社員を使い捨てにしない会社」。それが「日本の会社」だということは心に留めて経営をすべきだと思う。
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