神社仏閣の作り手が一体誰か知っていますか 伝統の「宮大工」の全容を網羅する蘊蓄100章

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21. 歴史的には古代、中国から伝えられたといわれるが数学の三角関数や微積分、平方根などが応用されている

22. 経験や口伝による工匠間の秘伝だったが、江戸時代に理論化され幕府の大棟梁・平内延臣によって大成した

23. 神社仏閣などの屋根のそりや垂木を放射状に展開した美しい曲線美はこの規矩術によって実現されている

24. 宮大工の作業は建築のみならず装飾にも及び、木材を生かした「彫刻」や「漆塗り」なども手掛ける

25. また有名寺社の修復作業はごく一部の宮大工にのみ認められる〈名誉〉とされ、その修行には数十年かかる

26. 宮大工になるためには資格は必要ないが、建築系の学校で学ぶ、棟梁に弟子入りするなどの方法がある

27. かつて宮大工の技術・技法は、徒弟制度によって師匠から弟子へ口伝で継承された

28. 現在は会社組織になっているものも多く、研修と実地教育を併用することで後継者育成を行っている

新人が最初に習うのは道具の手入れ

29. 宮大工は木材の切り出しから加工までを自身の手で行なうため「道具の品質管理」に非常に気を使う

30. 道具の手入れが悪いと木材に影響し、その木材を使用して組んだ建造物にも悪影響が及ぶためである

31. 新人が最初に習うのは道具の手入れといわれ、ノミや鉋(かんな)などさまざまな刃物の研ぎ方から勉強する

32. 多くの宮大工は一日の作業が終わると研ぎ場につめ、丹念に道具の手入れを行う

33. 熟練の宮大工が研いだ鉋で木を削ると、その木くずは1mmにも満たない薄さになるといわれている

34. また仕上げられた木の表面も美しく、そこにはまるで鏡のように顔が映るともいわれる

後日の評価に備えて最高の仕事をする(写真:イーグル / PIXTA)

35. 宮大工の仕事の工期は短いものでも2年間、有名寺社の修復となると10年以上も現地に留まることもある

36. 神社仏閣が完成した際、宮大工はその寺社に工事関係者の名前を記した「棟札(むねふだ)」を残す

37. この棟札が次に見られるのは解体作業のときであり、短くても数十年、長ければ数百年、誰の目にも触れない

38. それゆえ後日の評価に備えて最高の仕事をすること、そのための弟子を育てることが宮大工の使命とされる

39. 世界最古の建設会社で宮大工の組織としても知られるのが578年に始まる「金剛組」である

40. 創業者は聖徳太子が大阪「四天王寺」を建立するために百済から招いた宮大工のひとりである金剛重光

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