国宝を守らなければ「年金・医療」はもたない イギリス人アナリスト、「文化と経済」を斬る
日本の文化財行政が、大きな転換期を迎えています。なぜかというと、これまでの文化財のあり方を変えることによって、日本が直面している大きな課題の解決に貢献できる形にするためです。
実は、文化芸術・創作活動の振興政策にも大きな問題があり、文化行政全体が大転換を迫られているのですが、その大本は文化財行政にあると言えます。なぜなら、日本の文化行政の根幹には、明治時代以来の「優れたものを選定し、税金(補助金)を投入して手厚く守る」という考え方が根強くあり、この考え方が、どれが優れたものかを選ぶことが到底できないはずの新たな文化芸術・創作活動をも支配し、芸術や文化の発展を、むしろ阻害しているのです。
それゆえ、その大本である「文化財行政」の大転換が、日本の「文化芸術立国」実現のために不可欠であり、「今」取り組まなければ手遅れになるほど差し迫った課題なのです。
では、文化財行政が大きな転換を迎えることで、どのような課題が解決されていくのか。私としてはここで、4つのポイントを挙げさせていただきます。
(1)観光立国の実現のため
少子高齢社会となった日本において、これまでと同様の社会保障制度を継続させていくには、健全な財政が必要であり、そのためには「強い経済」が必要不可欠です。
労働力人口や消費者が減っていくなかで経済を強くするためには、これまで以上に生産性を上げ、合理化を進めていかなくてはいけません。何でも合理化すればよいというものではないという風潮もありますが、これは好む好まざるという話ではありません。合理化ができなければ、社会保障制度が破綻するというだけの話です。
では、労働人口や国内市場が縮小していくなかで、「強い経済」を実現するにはどうするかということを考えたときに、日本が進むべき道のひとつは「観光立国」です。
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