26歳「発達障害」と一途に向き合う彼の生き方 当事者だからこそ似た境遇の子を支援したい

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「ソーシャルスキルトレーニングは、一言で言うと、社会で自律して生きていくために必要な能力を学ぶ学習です。その最も重要で中心的なスキルとして、コミュニケーションスキルがあり、そのコミュニケーションスキルを学ぶ手段として、ケーススタディやロールプレイングゲームがあります。

たとえば、『●●ちゃんは■■君にこう言いました。●●ちゃんはなぜ■■君にこんなことを言ったのか、考えましょう』というような、本音と建前みたいなテーマでロールプレイングゲームの実践があります。

でも、学習支援にしろソーシャルスキルトレーニングにしろ、指導員によって教え方は全然違います。僕はもともと、クリエイティブなことをやりたいと思っていたので、この子はこういう教え方をしたら喜ぶだろうなぁと想像しながら教材を準備して、それまで全然興味を持っていなかった子どもが急に目の色を変えて楽しそうにしていると、すごくやりがいを感じます」(金井塚さん)

当事者として発達障害の子どもを見ている金井塚さんは、自分の子どもの頃と重ねてしまうこともあるという。そして、この子の特性は少し改善したほうが将来生きやすくなる、でもこの子のこの部分は残しておいても他でカバーできるかも、と未来的な視点で子どもを見守っている。

個性として片付けるだけでは不十分

今回、金井塚さんは自らこの取材を受けたいとTwitterでダイレクトメッセージを送ってきた。最近はタレントなどの著名人が発達障害をカミングアウトし、発達障害がアイデンティティーとなって成功する人がいることが一般的だと思っている人がいることにモヤモヤを抱いているとも語る。

「発達障害を凹凸として捉えることはアリだと思うんです。今まで発達障害の人って『ちょっと変わった人』みたいな感じで特別な診断は受けずに生活をしていた人が多かった。でも、今は診断を受ける人が増えていて、世の中に発達障害という言葉が広まっています。

一方で、顕在化されつくしたことにより再び顕在化しているようにも思います。みずから発達障害を告白しているSEKAI NO OWARIのfukaseさんみたいに、発達障害を持っていながら、その個性ですごく成功した人もいる。

ただ、自分を含めて特別な才能を持っている人のほうが少ないのではないかと思っています。自分自身もそうでしたが、文系で特に資格も持たずに大卒で就活をする際、いちばん求められるのはコミュニケーション能力や集団への適応性、バランスよくマルチタスクをこなすことです。

でも、発達障害を抱えていると、ここにうまく適応するのは相当難しいと実感しました。だから、社会全体の認識としては、個性で片付けるのではなく、抱えている深刻な課題を把握して、社会に適応できる環境を作るべきだと思います」

目まぐるしく変わりゆく話題に頭がクラクラするような取材だった。発達障害でつらいのは二次障害をはじめ、枚挙にいとまがないが、何よりもつらいのは「孤独」だと金井塚さんは語る。

周りが楽しそうにしていても、自分には何がおもしろいのかがわからない。自分の好きなことややりたいことを一生懸命語っても、相手に響かない。そのようなズレは発達障害の人にしかわからない。この孤独を埋める方法はあるのか。それを探すのも今後の課題になりそうだ。

姫野 桂 フリーライター

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ひめの けい / Kei Himeno

1987年生まれ。宮崎市出身。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをしつつヴィジュアル系バンドの追っかけに明け暮れる。現在は週刊誌やWebなどで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好きすぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。趣味はサウナ。

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