小林製薬「小さな池の大きな魚」戦略の舞台裏 ニッチ市場で高シェア商品を連発できるワケ

✎ 1〜 ✎ 54 ✎ 55 ✎ 56 ✎ 最新
拡大
縮小
小林製薬といえば、ユニークなネーミングが有名です。その経営哲学とは?(写真:小林製薬)

この9月末に筆者が司会をした異業種交流会があり、そこで小林製薬(大阪市中央区道修町)の小林豊副会長にご講演をいただきました。舞台脇の司会席でお聞きしていたのですが、これが実におもしろい。当連載、普段はなにわの中小企業の意欲的な試みを取り上げているのですが、今回は東証1部上場、従業員単体約1200人、グループ約3000人の大企業の経営哲学をご紹介します。

意欲的な取り組みが満載

この連載の一覧はこちら

小林製薬には、中小企業の経営者にとっても、参考になる意欲的な取り組みが満載です。小林製薬といえば、ユニークなネーミングが有名です。「ブルーレット」(水洗トイレ用芳香洗浄剤)、「熱さまシート」(額用冷却シート)、「ナイシトール」(肥満症対策薬)など、名前を聞くだけでその効用がわかるのが特徴です。

たとえば「ブルーレット」ですが、現会長の小林一雅氏がアメリカ留学中、現地の芳香洗浄剤からヒントを得て、帰国後4年の開発期間を経て1969年に発売されました。当時から、同社のマーケティングの基本である「わかりやすさ」が貫かれ、発売以来約半世紀、人気のロングセラー商品となっています。

しかし小林製薬が、2016年12月期まで19期連続の増益、18期連続の増配を遂げたのは、この「わかりやすさ」だけが理由ではありません。「“あったらいいな”をカタチにする」ためのさまざまな取り組みについて、次節から具体的に見ていきたいと思います。

小林製薬は、大阪・道修町に本社があります。田辺三菱、第一三共など大小の製薬会社がオフィスを構え、競合相手が目の前にひしめく、江戸時代から続く「薬の街」です。その中で、売り上げ1201億円、当期純利益143億円(2016年12月期)を上げています。同社が厳しい競争に勝ち抜き、好業績を続けている要因には、独特の成り立ちがあります。

次ページ「創造と革新」の原点
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
猛追のペイペイ、楽天経済圏に迫る「首位陥落」の現実味
猛追のペイペイ、楽天経済圏に迫る「首位陥落」の現実味
ホンダディーラー「2000店維持」が簡単でない事情
ホンダディーラー「2000店維持」が簡単でない事情
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT